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小柄
帆掛舟図(無銘・古後藤)
商品番号 :KZ-073
江戸前期 保存刀装具 桐箱入
70,000円
赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀色絵
長さ:9.81 cm 幅:1.47 cm 高さ:0.43 cm 紋部高さ(最大):0.57 cm
帆に風を目一杯受けてうねる荒波を疾走する様子を描いているのでしょう。潮風の力で膨らんだ帆とピンと張った綱が、あー前進しているんだなと思わせます。船尾の海上には波飛沫を表した粒が3個描かれ、動きを演出しています。船体自体は荒波に盛り上げられたかのような構図で、銀色絵を施した波と飛沫を額全体に描かないことで帆掛舟を強調したかったのかもしれません。これだけでも良い構図だとは思いますが、さらなる効果として作者が意図したポイントが舟の前方に置かれた櫂。小さく描かれていますが、この櫂だけ金色絵を施してあります。この意味するところは言うまでもありません。まさしく帆掛船の利点、風の力で人力よりも早く力づくよく進むその機能の凄さを言いたかったわけです。帆を上げている時には無用の長物となる櫂に、あえて金色絵を施し注目させる、そして画題の趣旨を伝える・・・この金工、やるではないですか。
本小柄の鑑定書には古後藤の極が付いていますが・・・確かに七子地は細かく整然としています。ただ、赤銅の色合いは黒いとはいえ漆黒とまでは言えません。構図もやや右に寄っており後藤本家の作としてはどうでしょうか。当店としては脇後藤だと思われますがいかがでしょうか。デザイン展開も古後藤の桃山期以前の作風とは思えません。波の形状や彫口といったこの手の作風は江戸前期によく見られるものです。擦り減った七子地の状態から古後藤としたのでしょうか、鑑定書の極は少し謎です。辛口はこの辺にして、疵のご報告を。小口の両端に合せ目の割れ、それと裏面の中央に僅かな凹みがあります。気になる方は留意してください。