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小柄

小柄

筆図(無銘)

商品番号 :KZ-076

江戸中期 桐箱入

100,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀素銅色絵 裏銀削継

長さ:9.68 cm  幅:1.38 cm  高さ:0.47 cm  紋部高さ(最大):0.52 cm

一本の筆が描かれただけの構図、シンプルです。画角の大きさに対して大き過ぎず小さ過ぎず、何の変化も加えることなく置かれています。・・・すごく端正な印象を受けます。横でも縦でもどちらでも成り立つデザインは、計算されたものなのか、結果的にそう見えてしまうのか、作者の意図を探るのが難しい作品。あえて、樋定規のごとく高貴な作域を狙ったものでしょうか。ただ、これだけシンプルになると、他の所作、例えば七子地や本体の造込などがそれなりのクオリティを持たねければ、台無しになるのは必然でしょう。見れば、細かく整然とした七子地が蒔かれ本体もこのイメージを損なわないだけの技術が見受けられます。裏は本体を斜めに二分する銀の削継の加工で、数カ所に点々の模様が施してアクセントをつけており、気の利いた造込になっています。画題の紋は柄の部分が金色絵。実物の柄は竹ですからやはり金、穂先は墨がついて真っ黒と思いきや、斜め半分は銀色絵で墨が浸みていない白い毛の部分を表しています。単に銀色絵が薄くなり黒い赤銅と馴染んで見えているようです。穂先と柄の間にちょっとだけ見える茶色い首部は、素銅による色絵・・・こうしてみると、画題は抜かりなく作り込んでいるのがいるのがわかります。シンプルながら華やかさもあって中々魅力的な小柄に仕上がっているようです。
問題は時代で、状態や色絵の所作、そして削継の所作などから江戸中期の後藤作に思えるのですが、いかがでしょう。しかし、本小柄と全くと言って良いほど同じデザインの作例が、『刀装金工後藤家十七代(島田貞良・福士繁雄・関戸健吾著)』と『刀装小道具講座(佐藤寒山,・若山泡沫著)』に載っています。その中で作者は後藤家五代・徳乗との極が。ただし、所載品に作には裏に〇〇の銘が刻られており、それを正真とみなしての極でしょう。ちなみに本小柄は無銘です。もし、本当に所載品が徳乗だとすれば時代は桃山期、おのずと本小柄も桃山期の作? 金銀素銅の色絵に銀の削継の所作があっても? 銘を信じるかどうかにもよりますが、当店としては銘よりも造込や色絵の所作という現実を優先して江戸中期、よくて江戸前期と推測しています。結果的に所載品の極を否定することにはなりますが、時代極に関しては皆さんの判断にお任せします・・・。

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