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小柄

小柄

蔓草図(無銘)

商品番号 :KZ-092

江戸中期 桐箱入

40,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金色絵

長さ:9.92 cm  幅:1.51 cm  高さ:0.53 cm  紋部高さ(最大):0.63 cm  重さ:33 g

あまり見たことのない図柄の小柄をご紹介します。一見、葡萄に見えるこの図柄、山葡萄でもありません。葉っぱの形状が異なります。じゃ〜一体、何なのか? これといった植物が見当たりません。秋草というアバウトな画題なら、もっと種類も多く総称として付けられますが、本小柄は一種類だけの構成。この植物を画題とする理由があるはずです。葉っぱは先が少し尖った横広の楕円形で縦の筋があります。蔓も伸びて、実が房のように付いています。やはり蔓系の植物でしょうね。う〜ん、野草っぽい・・・なんか見たことあるような・・・まさか、ヘクソカズラ? ありえないと思いつつ植物図鑑を検索! あ、これかな?・・・「猿捕茨(サルトリイバラ)」。秋によく見かける蔓系の雑草。道理で見た記憶があったわけです・で、猿捕茨を正解として話を進めれば、画題とした理由は、解説に「棘があって猿も思うように動けない」「葉と実は食用になり、根は薬用」とあって、なるほどなるほど。武用の喩えでも長寿健康の喩えでも通じます。
その画題のデザインは、地板の画角一杯に茂みを密に描いた洗練された構図。陰陽を踏んだ侘び寂びはどこ吹く風、どことなく現代風のイメージがあります。彫口は異なりますが、どこか美濃風の構図をしています。彫は中々緻密で写実的で、蔓と実、そして露象嵌に金色絵が施されています。その露象嵌ですが、色絵が擦れて素銅の銅色が露出しています。ケチったのか、赤銅の露象嵌ではないようです(コスト削減を考えれば当然の所作なのですが)。造は二枚貼合構造ですが、地板は嵌込方式ではなく本体そのものを地板として七子地を蒔いているようです。その地板に長い一枚の紋を鑞付据紋にしています。結構密なデザインなので、据えるのが大変かと思えばそうではなく、紋自体が一つの塊なのでさほど面倒ではないのかも。
時代はおそらく江戸中期、紋のデザインや風合い、造からすれば江戸前期としても良いぐらいと考えられます。もしそうであれば、京金工あたりの極でしょうか。町彫だったらどこの流派? ちょっと強気ですが古金工としても通じるかもしれません。さっすがにここまで画角一杯のデザインだと後藤家には極められないと思われますが・・・補足ですが、小口の刃方側に5〜6ミリの割れがあります。鑑賞や使用に問題はありませんが念のためご報告を。

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