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小柄

小柄

秋草に虫図(無銘)

商品番号 :KZ-093

江戸中期 桐箱入

50,000円

赤銅七子地 高彫 金銀色絵

長さ:9.60 cm  幅:1.40 cm  高さ:0.41 cm  紋部高さ(最大):0.55 cm  重さ:26 g

巷によく出回っている新物(現在作)の類かと勘ぐってしまいました。秋草と虫を画題とした刀装具、特に小柄は新物が多く、真ん中に蟷螂を配し両脇に鈴虫を描いた作はその代表かもしれませんね。本小柄も秋草と虫を画題とした数あるバージョンの一つでしょう。しかし、新物ではありません。江戸中期は降らない時代があり、江戸前期の作といっても不思議ではありません。細かく蒔かれた七子地は、手擦によって平坦になった個所もあり時代を映し出す証とも言えます。
造は二枚貼合構造地板嵌込方式、紋は裏打出からの高彫です。紋のなだらかな稜線、地板に溶け込む彫の際が据紋ではないことを明瞭に示しています。その紋には金と銀の色絵が・・・擦れてよく見えないかもしれませんが、菊?と桔梗の花に銀色絵を施しています。面白いのは金色絵で施した虫の表現で、右端の虫(おそらく鈴虫)はよく認識できるのですが、他の虫は左寄り下側に無赤銅の小虫が一匹だけ? 実は所々に伸びている金色絵の線・・・これは虫の触覚で体は草陰に隠れて見えないような構図・・・細長い葉っぱではないのです。おう、なかなか洒落た構図ではないですか。虫が賑やかに奏でる秋の夜中の一区画、てなわけです(やや恥ずかしさを覚える表現を揶揄してください)。 それはそうと、本小柄のような作風を極めるとしたら日刀保さんはどう見るのか・・・巷では新物も含めて「美濃」としているのが圧倒的に多い気がします。たぶん、秋草と虫という画題からそう極めているのでしょうが、それだけを根拠にするにはちょっと早計かと。本来、美濃なら鋤出彫が前提になるはずで、なだらかな彫口の本小柄はそれに当てはまりません。じゃーどこへ持っていくのか・・・やはり京金工? 後代美濃? まさか古金工? てなわけで、時代も流派も誤解を受けそうな本小柄、どなたか迷子を引き受ける数寄者さまがおられたら幸いです。

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