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小柄

小柄

丁子唐草図(無銘)

商品番号 :KZ-293

室町後期 桐箱入

200,000円

赤銅七子地 高彫 金銀露象嵌 両袖裏四分一

長さ:9.64 cm  幅:1.46 cm  高さ:0.51 cm  紋部高さ(最大):0.72 cm  重さ:37.86 g

古い笄を小柄に仕立て直した笄直の袖小柄です。丁子と唐草を描いた構図は左から右へと延びていますから、元々は笄だったことがわかります。笄の額内で切断したようで、蕨手と木瓜の痕跡は見当たりません。しかし横から水平に見ると、両袖の際から盛り上がる紋の稜線が確認でき、笄だった頃の姿を残しています。これに限らず、そして疵があろうが無かろうが、なだらかなで肉置豊かな紋の作例を見るたびに古い時代の趣に惹かれてしまう当店。運良く本作は最初からこの姿ですと言わんばりに復活を遂げた好例です。
四分一の本体は極めて状態がよく、仕立直されたのは江戸後期に入ってからでしょう。紋は古いです。潤いのある漆黒の赤銅地に鋤出彫風に彫り上げた唐草と丁子の紋。丁子の実と唐草の形状が古臭く雅味を感じます。表面は経年の擦れによるものか滑らかな光沢を放っていますが、磨耗の度合いはそれほどではありません。そして細かく整然と蒔かれた七子は紋の彫際を意識しながら整えられており、紋が鑞付による据紋ではなく無垢からの高彫であることを示しています。笄直であることを考慮すれば納得の所作であり、古さの証明とも言えます。露象嵌に施された銀の色絵が気になりますが、総体の造込からみて時代は室町後期と推測しています。
この古い紋の地板を、四分一の本体に組み込んだのは正解だったようで、まるでお洒落な絵をスッキリとした額に落として飾った絵画のようです。もはや道具ではなく、工芸品を越して美術品の類に生まれ変わったような感じさえ受けます(もちろん現在では古美術品として扱われていますが)。作域は古美濃風のテイストを持っていますが、地金の色合いや丁寧な七子地の処理と彫口は古後藤と極めても違和感はなく、元は上作の古笄だったと思われます。華麗なる変身を遂げた美魔女といったら、本作に失礼でしょうか・・・魅力を保つための変化は全然ありだと思う当店です。

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