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小柄

小柄

曲馬図(無銘)

商品番号 :KZ-301

江戸中期 桐箱入

70,000円

赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀素銅色絵 裏哺金

長さ:9.59 cm  幅:1.44 cm  高さ:0.47 cm  紋部高さ(最大):0.70 cm  重さ:27.66 g

馬に後ろ向きに乗っている武者。何とも珍しい構図で初めて目にしました。そうとはいえ、故事や風物の例えを画題にしたのかなと勘ぐって画題事典を開いても、何も示してくません(どなたかこの画題を知っている方がいらっしゃるのであれば、ぜひご教示くださるようお願いいたします)。ですから、これ以降、当店が勝手に調べて推測した仮想の紹介と思ってください。
どうやらこの画題は「曲馬(きょくうま)」を表した構図のようです。江戸中期頃から始まったとされるこの曲馬、その意味合いの通り乗馬による曲芸です。それなりに流行ったらしく幕末には女曲馬師も現れたそうです。そうだったのかと、真ん中にポツンと置かれた紋の粗探しをしていたら、この後ろ向きの武者は馬に跨っているのではなく、右足を鐙にかけ左足は馬の脇腹に添えた宙ぶらりん状態。なるほど、くるっと跨って馬に乗ればちゃんと正面を向く態勢と取りながら曲芸を披露しているわけです。やはり曲馬の線が正解と確信してきました。それでも、追っ手から逃れている様子だとか、武者仲間の前で余興で馬術を誇示している光景だとか、有り得ない絵を示すことで斬新で奇抜な発想を主張しているだとか・・・いろいろ妄想するのですが案の定、袋小路に嵌る当店。素直に曲馬の図としましょう。
造は二枚貼合構造に地板嵌込方式です。地板は赤銅七子地でそれほどの黒さではありませんが、七子の粒は整然と蒔かれています。そこに曲馬の紋を鑞付据紋にしています。さすがに江戸中期にもなると色絵の所作は多彩になり、金銀素銅をデザインに合わせて塗り分けています。馬の体にも曲馬らしく銀の斑点を描いて、華やかなショーにふさわしい姿に演出しています。状態は七子も色絵もとても良い状態、裏の哺金も目立った擦れはありません。作域は細部まで細かく彫り上げています。しかしもう少し丁寧さがあれば・・・・と思うのはちょっと贅沢な感想でしょうね。極は脇後藤か京金工あたり、もしくは町彫ですが当店の貧弱な眼では町彫の流派までは見通せません(町彫に関しては当店も後ろを向いている状態です)。この小柄、極は気にせずユニークなこの構図を楽しむだけでも良いかと・・・珍しいですからね、後ろ向き。

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