表／長さ：3.75 cm　　幅：1.32 cm　　高さ：0.55 cm
裏／長さ：3.56 cm　　幅：1.41 cm　　高さ：0.62 cm
この目貫は表裏ともに洗ってあります。なので、見た目にはとても綺麗です。なので、思った以上に製作時代が若く感じられます。なので、愛好家にとっては評価が分かれるところですが、好みの良し悪しはお任せします。当店としては少し残念です。
それはそれとして、薄い造に抜孔があり、裏行の圧出にはかなり手を入れたようで、その鏨根がいたる所に表れ目貫を楽しむ所作がてんこもりです。根は陰陽根ですが、あからさまに地板と色が異なる点は同時代の所作なのか疑問が残ります。総体的なフォルムに立体感のある体配から推定すれば、時代は江戸初期頃の作。鑑定書では古金工となっていますが、色絵の所作も含めれば桃山期の作とは思えません。ただ、完成度も高く上手の一品には違いありません。
愛らしさが漂う橘（蜜柑）を題材にした作ですが、大きさから見て用途は短刀でしょうか。小さめの露玉も上品で、二つ並んだ金の実が鮮やかに映え、当時は洒落た目貫に映ったことでしょう