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目貫
流水に桐菊紋図(無銘)
商品番号 :MK-012
江戸後期 桐箱入
売約済
赤銅地 容彫 金据紋
表/長さ:4.65 cm 幅:1.32 cm 高さ:0.59 cm
裏/長さ:4.62 cm 幅:1.30 cm 高さ:0.57 cm

上質の黒い赤銅地に、流水に波打つ波頭の様を立体的に彫込んで上手です。裏行もこの時代にしては打ち込んでいる方で、肉厚ですが表の高彫の所作と江戸中期以降における圧出の度合いを考えれば出来が良く、保存状態は申し分ありません。画題は流水に五三桐と菊の紋をあしらった珍しいデザインで、真っ黒な地板に金の色彩が鮮やかに映えます。彫口だけでも躍動感が見てとれますが、紋の重ね方と位置を表裏で変えてあり、何気ない中にも気の利いた構図で決して単調ではありません。
珍しいといえば造込の所作も初見です。金の据紋にしている造りで、わざわざ金紋を強調するかのように据える土台を作り、紋と同じ輪郭に整えています。赤銅地の立上がり途中から金紋に変る線が明瞭に見てとれ、興味深い作です。しかし、何故金紋にしたのでしょうか。普通であれば、桐と菊の紋は色絵にすればすむ話。それをあえて金据紋にしたのは、そうしてくれと注文主に依頼されたと考えるのが自然です。格式を重んじたか、身分相応の品を求めたのか理由は想像の域を出ませんが、贅沢をしたことは確かです。見栄を張ったにせよ誂え品には違いなく、ちょっとした高級品として誕生した本作です。金無垢と比べれば華やかさは薄くなりますが、黒と金のコントラストが却って誠実さと格式ある高級感を醸し出すことに成功しているとも言えます。
