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目貫

目貫

波に標木図(無銘・古後藤)

商品番号 :MK-037

桃山期 保存刀装具 桐箱入

170,000円

赤銅地 容彫 金袋着

表/長さ:4.02 cm  幅:1.37 cm  高さ:0.61 cm
裏/長さ:4.05 cm  幅:1.49 cm  高さ:0.60 cm
背が高いというほどではありませんが、際端が窄まり形よく、地板も薄く、古い時代の目貫の特徴をよく体現している本作。裏行も掟通りというか丁寧な圧出跡が見え、なかなかの優作です。とくれば、色絵は金袋着。裾際に金の板片が残っている箇所もありますが、ウットリ象嵌ではないようです。ウットリであれば室町後期まで時代を上げてもよい作ですが、袋着だとやはり桃山期が妥当でしょう。地金の色はかなりの漆黒。薄板の造込と金板の厚みも考えれば古後藤の極に・・・確かに彫も上手ですが、波の所作が少し荒い気もします。ただ総体的によくまとまったデザインで、木の角材のシャープなラインが印象的です。曲線主体のこの時代の目貫を考えれば、斬新な構図の目貫といえます。
画題は波に標木・・・? 標木? 道案内や何かの目印にする標木ですか。標木は古くからあるようですが、本作の標木には紐らしきものが絡まっています。他の標木とばらけない様にする紐でしょうか。それに各標木の一方には突起が・・・これは何でしょう? 背景が波なのも解りません。標木を川に流して運んでいる構図なのでしょうか? 簡単そうにみえて不可解な画題です。画題の命名者には失礼だと思いますが、これは標木ではないような気がします。かといってそれに代わる画題は思い浮かびません(解らないなら黙っていろと批判を受けそうです)。神事に使うものか、軍事用か、生活用か、それとも建築資材・・・だれか教えてください(降参です)。
※追記/つい最近、以前にも当店の目貫の画題についてご意見を頂いた愛好家の方から、この画題について参考となるご教授をいただきました。その方が調べたところ、「焼津八丁櫓」と呼ばれる徳川家康に縁のある舟の櫓ではないか、とのご指摘です。ネットにも写真や解説等が載っておりました。なるほど、似ています。小さな木片だとの先入観のせいで、大きな部材かもしれないという想像が働きませんでした。よくよく見ると、どうやら櫓床(ろしょう)または梁(やな・はり)といわれる櫓で船を漕ぐ際の土台のようです。これで突起物の正体も説明がつきます。大きさからは突起物が片側だけなので、焼津八丁櫓ではなく、もっと前の時代の小型の船用かもしれません。そう考えれば、金袋着が行われていた時代と辻褄が合います。・・・今のところ、この説が最も説得力があると思われます。愛好家のKさん、貴重なご教授をありがとうございました。

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