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目貫

目貫

藤菖蒲図(無銘・古金工)

商品番号 :MK-057

桃山期 保存刀装具 桐箱入

売約済

山銅地 容彫 金袋着 金銀露象嵌

表/長さ:4.00 cm  幅:1.58 cm  高さ:0.58 cm
裏/長さ:4.05 cm  幅:1.63 cm  高さ:0.58 cm
季節や香り、イメージといったテーマに沿って植物を組み合わせ画題としたものには、四君子(梅・竹・蘭・菊)をはじめとして色々あります。じゃー本目貫のテーマは何でしょうか。藤と菖蒲、たった2つだけの組み合わせ(大概は4つ以上が多い)ですが、あえて例えるなら終春? いや、梅雨? 日本では藤は四月、菖蒲は五月の花(安易に花札から引用)ですからタイトルをつけるとすれば「二春雨花」・・・みなさん、勝手につけて楽しんでください。
藤と菖蒲が絡み合った構図は複雑で、どれが菖蒲なのか一見しただけでは戸惑います。藤花に金が施されているので何となく藤の花は認識できるのですが、よくみると菖蒲の花にも金袋着がされていたようで出来たての頃はかなり派手な姿をしていたようです。しかし地板は赤銅ではなく山銅。山銅に金の袋着やウットリを施した作例をよくみかけますが、いつも不思議に思うのです。この手の作は上手作の高級品に多いのですが、山銅に金をあしらうのなら地板を赤銅にした方が良さそうな気が・・・それでは代金が高くなりすぎるので、材料費を削りながらも見映え重視で山銅に金の色絵を・・・そんな図式でしょうか? それとも地方金工なので赤銅を使えない? こういった見方は安易な憶測ですが、なるほどと納得できる理由なり背景を知りたいものです。
ちょっと脱線しましたが本作の造はというと、時代を証明するかのように薄めの地板で圧出も強く裏行はなかなか上手です。少し強く叩きすぎたのか、表目貫の一箇所に小さな亀裂があります。これは後世できた亀裂のようで、最初から割れていたら当金をして補修しているはずです。しかしこの亀裂は金工がギリギリを攻めた技量の証でもあるのです(ある意味、誉傷)。表の彫はというと、結構大雑把でゆる〜い所作・・・決して緻密ではありません。このへんが後藤家や赤銅の高級品との差なのでしょうか。ま、それはそれで味がありますし、趣向の問題としましょう。
しかし、鑑定書に関してはかなりの不満が! 以前も書いたことがありますが、最近の色絵に関する表記は何とかならないものでしょうか? 鑑定書には単に「金銀色絵」とだけ・・・・実際は「金袋着、金銀露象嵌」・・・近頃の日刀保の先生さまは、ウットリも袋着も鑞付も一括りに色絵としているのでしょうか。本目貫に関しては露象嵌も色絵扱い、終いには鍍金も色絵と表記してしまうのか、かえって期待してしまいます。まぁ、それならそれで統一宣言をしてほしいものです。(いやー愚痴ってしまいました。みなさんお許しください、日刀保に悪意はないのです。)

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