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目貫

目貫

兜図(無銘・水戸)

商品番号 :MK-066

江戸後期(幕末) 保存刀装具 桐箱入

売約済

素銅地 容彫 象嵌色絵

表/長さ:3.85 cm  幅:1.97 cm  高さ:0.63 cm
裏/長さ:4.01 cm  幅:1.85 cm  高さ:0.78 cm
これは若いな、と見た目にもわかる素銅地の目貫。素銅と山銅の色合いの違いを教えてくれます。そして彫り上げた画題のリアリティさが違います。まるで精巧なミニチュアです。現代の工業製品ならわかるのですが、手作りでここまで作り込むのですからその技巧に驚かされます。おまけに工業製品にはない風合いを備え、美術的価値を感じます。
画題は兜図、表目貫を正面から、背面からを裏目貫とした構図で、表裏の意味合いをうまく利用しています。裏行の圧出はそれほど強くはなく、若い目貫にありがちな少しのっぺりとした造込。特に見所はありませんが、裏行の内部全体に何やら吹き付けたような鈍い光が。真鍮でしょうか、それをスプレーしたかのような感じです。保護するため? 目印? さっぱりわかりません。裏行はこれぐらいにして、肝心の彫の所作を見てみましょう。江戸中期以降の目貫となれば、裏行を論じるよりも、表の彫や表現に面白さが詰まっていますから・・・
型を元にしているとはいえ、このリアリティさはどこからくるのでしょう。ルーペで隈無く観察。おや、兜の頭にある筋と呼ばれる部分や錏(しころ)を区切る部分、黒い赤銅の線が彫ったのではなく嵌め込んだように・・・その線を追って裏行まで辿ると、象嵌した跡がハッキリと出ているじゃないですか。ということは、この黒い赤銅の線はすべて地板を彫って嵌め込んだ象嵌。銀の露象嵌を施した星(筋の間に撒かれた粒々)も象嵌。普通は地板を彫込によって表現する造形を、わざわざ溝を彫って、そこへ赤銅地の線を埋め込んであるのです。その線の数、なんと26本。星の露象嵌に至っては66個も埋め込んでいます。(まあ、七子を蒔く根気に比べたら、彼らにとってはお手のもんかもしれませんね。)道理で精巧なミニチュアに見えるわけです。もはや美術工芸品の域。水戸物の小道具を愛好する方にとっては特に驚かれる技ではないもかもしれませんが、若い小道具に疎い当店には、勉強させられる本作です。

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