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目貫

目貫

二疋蟹図(無銘・古金工)

商品番号 :MK-067

江戸前期 保存刀装具 桐箱入

売約済

赤銅地 容彫

表/長さ:3.25 cm  幅:1.42 cm  高さ:0.48 cm
裏/長さ:3.14 cm  幅:1.43 cm  高さ:0.55 cm
定番の画題のように思われる蟹の目貫ですが、意外に見かけることが少なく、年配の愛好家が好んで愛蔵していると聞きます。そんな蟹の目貫ですが、構図はバラエティに富んでいて、複数の組み合わせから笹や菱、流水など水に関連する背景と一緒に描かれることも多いようです。本目貫は二疋蟹。構図としては単純で定番中の基本と言えます。縦と横の比率がちょうど目貫の形状に合うので、柄に装着しやすいのでしょう。
造は少し厚めの地板ですが思ったより圧出は強く、ちょうど甲羅の部分の裏行は鑚痕の痕が多数確認できます。それでもこの厚めの地板ですから、時代は江戸初期ではなく前期あたりまで下がると思われます。一応鑑定書では古金工となっていますが、桃山期以前に極めるにはちょっと無理があるような気がします。赤銅の色は麗しい漆黒、かなり深い色合いです、残念ながら底面が削られていて、出来た当時よりは僅かに背が低くなっているようです。そして足は後補の所作、折り曲げられ尚且つヤスリで底面と同じ高さに削られていることから、装着し直された際に底面と一緒に、柄に合わせて削られたことがわかります。柄に装着されるのが目貫本来の役割といえばそれまでですが、すこし残念。
表の彫は結構細かく、手の込んだ所作を見せています。爪、脚、甲羅それぞれの肌の質感に合わせた表現、脚のフォルムも一本一本異なり、左右対称にはなっていません。細かな所にまで気を遣うあたりに、職人気質を感じます。そこで一つ、気になる所作が・・・表目貫の右の蟹一匹だけが、目玉に金色絵が施されているのです。よーく見ても、他の三匹にはありません。何故、一匹だけに? 当店得意の「勝手な憶測」では、表裏の目貫を識別するための印ではないかと・・・見た目にはほぼ同一に見える二つの目貫。装着する際に表目貫と裏目貫を間違えないようにするための工夫だと推測しています。目玉であれば、片方だけ金であってもそれほど違和感はないと思われるのですが、皆さんは賛同してくれるでしょうか。それなら裏面に何か印をつければいいじゃないかと・・・ごもっともなご意見。陰陽根にする(ちょっと面倒)、裏に色絵(もったいない)・・・もう、反論多数を無視して、柄巻師がすぐに判別でき、尚且つ見映えを損なわないという脆弱な根拠をゴリ押しです。

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