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目貫

目貫

雨龍図(無銘・京金工)

商品番号 :MK-087

江戸中期 保存刀装具 桐箱入

売約済

赤銅地 容彫

表/長さ:3.77 cm  幅:1.43 cm  高さ:0.51 cm
裏/長さ:3.77 cm  幅:1.42 cm  高さ:0.51 cm

本目貫は表裏目貫がほぼ同じ形状で、肩を反転して作ったかのようです。顔の角度、足の向き、胴体のうねり、どれもが反転模写かと思ったのですが、異なるフォルムが一個所ありました。まるで間違い探しのように小探しすると、尻尾が・・・尻尾の回り込みが反対ではないですか! 表目貫は時計回りに、裏目貫は反時計回り。なんかホッとしたというか嬉しいような感じは、本作がありふれた数物ではありませんということが示されたような気分です。かといって高級な上手作でもないことも確かです。それなりの上作であれば、フォルムの形状そのものも、動きや独創的なデザインがみられるというもの。ほんの一部だけを変えて済ませるようなことはしないでしょうね。
そんな立ち位置の本目貫ですが、造は新しい時代の所作を示しています。まずは地板、厚くしっかりしており、物が豊かになった時代を象徴するかの造です。裾際の括りも見られません。腰も低く平ったい感じですが、底面が高さの調整で削られているので一概に腰の低さを責められません。圧出も確認できますがそれほど強くはありません。というわけで、裏行は時代相応の造り込みで、敢えて見所と言える個所は残念ながらありません。その代わりに表の彫口は、さすが江戸中期以降の緻密で丁寧な所作が散見されます。滑らかな雨龍らしい曲線で構成された体を立体的に表現した所作は見事で、メリハリがあります。特に抜孔の処理は上手で、側面まで丁寧に彫り上げています。顔の表情も面白く、厳つい感じがなくどちらかといえばマンガチックな愛嬌があるというか、微笑んでいるような表情がユニークです。
地金はかなりの黒さで、後藤家の黒さに負けないほど。これも時代のなせる技、物量の豊富さを物語っているのかもしれません。てなわけで、鑑定書の極は京金工・・・少し古く見たのでしょうか? 作域的には後藤家でも良さそうですが、やはりフォルムの工夫や龍の顔つきが影響したのかもしれません。町彫の可能性もありますが、みなさんはどこに極めるのか知りたいところです。ちなみに本作は。高名な刀装具の先生の愛蔵品だったと聞いています。本当かどうかはわかりませんが、いざ愛蔵するとなる方にはそっと耳打ちいたします。伝・〇〇先生が持っていた作だと・・・あくまで“伝”ということですが。

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