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目貫
山葵流水図(無銘)
商品番号 :MK-089
江戸中期 『刀装具の美 目貫(1)』(むさし屋著)所載品 桐箱入
40,000円
赤銅地 容彫 金色絵
表/長さ:3.78 cm 幅:1.68 cm 高さ:0.61 cm
裏/長さ:3.83 cm 幅:1.64 cm 高さ:0.62 cm
二股大根のようにも見えますが、山葵を画題とした目貫です。大根とは葉っぱの形状があからさまに違います。おまけに流水との組み合わせですから、間違いなく山葵です。外形はふっくらとしたラグビーボール状をしており、一見、古そうに見えますが時代はそんなに上がらないでしょう。おそらく江戸前期から中期頃・・・山葵はともかく流水を採用したデザインですから意匠的に江戸前期以降にみられるデザイン。腰高に見えますが裾の形状に括りがなくノッペリとしています。底面を削られていないことは、裏面の縁に金色絵が回り込んで残っていることからも明白で、最初からこの生姿であるとわかります。その金色絵ですが、ちょっと悩みどころが。この金色絵、葉っぱと根の色合いが異なっています。葉っぱの方が金色が強く、根は銀色を帯びているのです。手法は銀鑞かアマルガムによる色絵だと思われますが、色合いの境目が馴染んではっきりと区別できません。グラデーションのような風合いです。銀鑞による色絵なら擦れて銀色が現れても不思議ではないのですが、根だけ擦れる形状でもなく意図的に着色したと思うしかないのです。途中まで金色絵で、そこから徐々に銀色を帯びた色絵にできるのでしょうか・・・できるのでしょうね、ここに現物があるのですから。つまり二種類の金を使い分けて色絵を施しているわけで、かなり高度な技だと思われます(この手合いの色絵は多くはありませんがたまに見かけます)。こういうことも踏まえると、時代は下げざるを得なくなり、結果として江戸中期以降の作だと推測されるのです。
江戸中期頃の作としては圧出は強く、かなり責めており地板も厚くはなく好感が持てます。このグラデーションのような色絵ではなかったら、江戸初期まで上げられたかもしれません。彫口はかなり濃密で高低差もあり上手の作りです。山葵と流水の向きも表目貫と裏目貫とで分けた形状で動きもあり、考えられてはいますが、少し色絵をやりすぎている感があります。まあ、華やかさは十分に出せているとは思いますので、そこは触れないでおきましょう。極は迷います。京金工が無難なところですが、町彫の作にも見えます。加賀後藤もなくはないし、最近流行りの京金具師?・・・まさか古後藤に極められることはないとは思いますが。みなさん、各自で喧々囂々してください。