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目貫

目貫

三輪図(無銘・後藤・桃山)

商品番号 :MK-090

江戸中期 特別保存刀装具 桐箱入

120,000円

赤銅地 容彫

表/長さ:2.78 cm  幅:1.74 cm  高さ:0.59 cm  重さ:4 g
裏/長さ:2.85 cm  幅:1.76 cm  高さ:0.57 cm  重さ:4 g

この目貫の画題、わかりますか? 一部分はわかります・・・絹糸を巻きつけた木枠(糸枠)が表裏目貫の端に一つずつ彫られています。しかし、残り二つずつ彫られた何かの実のようなものは、一体何でしょう。思いつくままに思案するするのですが、はてはて? 天地を逆に見れば、もはや苺にしか見えません。ビールの原料のホップ? 葡萄の実にしては細長過ぎ。やっぱり、糸枠が一緒にあるのですからその関係する何か・・・植物の実から思考を切り離さないと自ら袋小路に嵌まるようなものです。仕方ありません、鑑定書に書かれた「三輪」という画題を探して画題事典を片っ端から見ていたら、それらしき絵と解説が・・・どうやら実に見えた正体は「杉の木」だったようです。なるほど、杉ですか。松の葉もそうですが、小道具におけるデフォルメのユニークさにはいつもながら驚かされます。肝心の画題「三輪」は、恋模様を描いた謡曲で日本の故事(内容は長くなるので調べてください)。鳥居と杉と糸があれば「三輪の図」とされるようです(因みに本作に鳥居はありません)。しかし、日本や中国の故事は難しいものです。薄学の当店としてはフォルムを見ただけで言い当てる知識人に嫉妬を覚えると同時に尊敬の念が湧いてきます。
造はというと、地金は赤銅地でかなりの黒さ、色絵はなくいわゆる無赤銅の目貫です。彫は簡素ながらも要所の毛彫はきっちりと施し、山なりの奇抜な形状と相まって古風な風合いを感じます。この苺もどきの杉の形が強いインパクトとして愛らしい印象を植え付けます。裏行の圧出は強くはなく地板も厚めなのを考慮すれば、時代は江戸中期頃でしょうか。鑑定書に桃山とあるので、もう少し古いのかと思いましたが裏行は正直なものです。裾際の括りもなく緩やかな立ち上がり、そして、小振りなサイズからして出目貫として据えられたのではないかと思われます。表面が擦れて毛彫の跡が薄くなっているのはその表れかもしれません。極は時代を考慮して京金工かと。裏行を無視すれば、古金工として十分に通用するとは思いますが・・・(この評価はあくまで当店の見方です)。

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