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目貫
梶の葉に筆図(無銘)
商品番号 :MK-091
江戸前期 桐箱入
60,000円
赤銅地 容彫 金銀色絵 銀露象嵌
表/長さ:3.89 cm 幅:1.70 cm 高さ:0.58 cm 重さ:6.40 g
裏/長さ:3.91 cm 幅:1.70 cm 高さ:0.62 cm 重さ:7.25 g
に一本置かれた棒は竹の柵かと思ったら、なんと筆でした。表目貫には穂先があり、裏目貫の筆にはキャップ(蓋)を被せてある構図です。梶の葉に筆、う〜ん文学的な匂いがします・・・ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この画題は“梶の七葉”、古くから貴族の歌に読まれた風習を描いたものです。七夕の夜、七枚の梶の葉に歌を書き織姫に手向ける風習で、意外に高貴な画題なのです。その画題を目貫にした本作。画題にちなんで葉っぱも七枚かと思いきや、そこまで枚数へのこだわりはないようでどちらも五〜六枚ほど。だからといって所作に手を抜いたとは思いません。ちゃんと穂先は銀色絵を施し、表裏目貫の違いを出しています。露象嵌も色絵ではなく銀の露玉を埋め込んでいます。色絵の露象嵌モドキではありません。作域も丁寧で、葉っぱの外形にあるギザギザも抜かりなく表現・・・こりゃー審査に出したら後藤の極を期待しちゃいます。見た目には古風な風合いも十分あり、古後藤なんかに付けてくれることも・・・あ、欲張った願望はいけませんね。期待に反する結果が出たら落胆が倍増しますので注意です。
裏面の圧出は地板の厚みに較べかなり責め込んでいるようです。決して薄い地板ではありませんが、かといって分厚いわけでもなく底面がやや削られていることを考慮すれば、江戸前期の時代は十分にあります。その削られた底面ですが、どうやら鑢で擦ったというより、鏨で削ぎ落としたような所作に思えます。面がザラザラの平面ではなく少し滑らかな凸凹状態で、手慣れた金工の所作とはいえ場当たり的なアバウトさを感じてしまいます。まあ、見えない個所ですから老練な金工ならありうる所作です。良く言えば、当時の金工の所作を直に感じられる作品と評することができるでしょうか。本目貫で三百年以上前の“こんなもんかなぁ”を味わうのも一景です。