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目貫

目貫

亀の手図(無銘)

商品番号 :MK-092

江戸初期 桐箱入

60,000円

赤銅地 容彫 金袋着色絵

表/長さ:3.67 cm  幅:1.41 cm  高さ:0.68 cm  重さ:4.76 g
裏/長さ:3.66 cm  幅:1.53 cm  高さ:0.66 cm  重さ:4.50 g

金色絵をあしらった中央の紋を、すっかり食べ物の茗荷だとばかり思っていたこの画題。だって、茗荷に見えますよね? このフォルム。しかしです、改めて黒い赤銅地の部分を見てみると、どっかで見たような記憶が頭に浮かんできたわけです。あれれ、刀装具の世界ではお馴染みのあれではないですか・・・滑らかな紐状のこれは、明らかに藻! 藻です。ご丁寧にも端っこの方には二枚貝の姿も・・・ってことは、この中央の物体は、はて? 藻貝に関係するものはやはり貝? あ〜これはもしかして岩場に固まってこびりついているやつ、亀の手では? ん〜亀の手ですね、やっぱり。(これ以降、亀の手という前提で話を進めます)
何とも意表をつくような画題です。貝をメインに持ってくるならわかりますが、亀の手を主人公に立てて藻貝を脇役にするとは思いもつきませんでした。やりますね〜昔の人の発想は奇抜です。まあ、考えてみれば、古人にとっては亀の手も貝類の一つだったのでしょう。現代でも細かいことを言わなければ、貝の仲間で通用しますから。岩場にびっしりと群生する様が繁栄を表すのか、食用として豊かさを表すのか・・・画題の意図としてはそんなところでしょうか。ただ、刀装具の画題では、脇役で藻貝図のどっかに出ていたのかもしれませんが、亀の手を中央にドンと持ってきたのは珍しく、もちろん初見です。
体配はふっくらと丸味を帯びた形状で、腰が高く括りもありかなり古く見えます。裏行の圧出も強く丁寧に打出していて好感が持てます。中々というより上手です。赤銅地の色合いもかなり黒さで、彫も見た目以上に細かく施しています。外形はちゃんとラグビーボール状で、画題のユニークさを除けば古後藤に極められても良い作域です。亀の手のフォルムなんか可愛らしくもあり愛嬌たっぷりです。時代はおそらく江戸最初期を下りません。桃山期としても十分に頷ける作風ですが、色絵が袋着やウットリではないので、当店としては江戸最初期とみています。審査に出せば、古金工はつくとは思いますが・・・画題を茗荷として提出したら、どんな表記になるのか試したくなりますが、画題に関しては極めて見識の高い専門家揃いの日刀保です。その鋭い眼はごまかせないでしょうね・・・ぬはは。

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