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目貫

目貫

粟に鶉図(無銘・古金工)

商品番号 :MK-212

室町後期 保存刀装具 桐箱入

130,000円

赤銅地 容彫 金袋着露象嵌

表/長さ:4.40 cm  幅:1.41 cm  高さ:0.76 cm  重さ:5.54 g
裏/長さ:3.95 cm  幅:1.39 cm  高さ:0.76 cm  重さ:5.07 g

粟といっても荒木東明の粟穂図の作域と較べてはいけません。あっちの作はまた特別な領域で、当店などお呼びでない別次元の代物、例え目にしても手に負えません。それとは趣を異にするというか、本作は気楽にご紹介できる目貫です。とはいえ、そこまで後ろに下がるどころか、どうだと言わんばかりに強気な見所を持った本目貫、あえて誇示してアピールしたいと思います。
どうです、このふくよかでなだらかな曲線美。縦も横も高さも厳ついところはどこにも感じられません。そして古風です。デザインにリアリティさはありません、いえ、いりません。このゆったとしたフォルムが生む優しい存在感がたまらなく良いのです。長年の擦れでこうなったのではありません。そりゃ〜多少の磨耗も関係しているでしょうが、窪んだ個所を見ても最初からの作域です。腰は極めて高く、強い括り、ちょっと大振りな体配・・・実用本位を理想を具現化したような姿をしています。これを柄に装着したなら、モッコリと膨らんでさぞかし手にフィットしたことでしょうね。まあ、江戸期に入ればこのモッコリは嫌われるか避けられることになってしまうのですが。
彫も大らかさを崩すことなく大まかな毛彫を施し、流れるような柔らかみがあります。てっぺんに配された鶉は粟に埋もれて同化したように佇んで、目立つのを避けているかのようです。色絵で強調するでもなく、所どころに露象嵌を置いただけ・・・本作は画題の趣旨というよりこのフォルムそのものが売りであり見所といえるのではないでしょうか。まあ見事な裏行の圧出からも、この時代の要求する形状を映し出していて好印象。かなり強烈な圧出で地板も薄く室町後期の作にふさわしい出来栄えです。因みに、付いているごっつい足は後補で、元々足のない目貫だったことは明らかです。ここまでの括りと造ですから足は必要なかったはずです。制作時代は室町後期はあるでしょう。もし、銀の露象嵌がなかったなら、もう少し時代を上げても良いぐらいです。見るからに古さが伝わってくる本目貫、どうです、東明の作と較べて怖気付かなくても良いのです。こっちには東明には絶対にない古さがあるのですから(負け惜しみと言われるのは悔しいので、踏ん反り返ってみました・・・)。

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