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目貫
梔子図(無銘・古金工)
商品番号 :MK-214
江戸前期 保存刀装具 桐箱入
80,000円
赤銅地 容彫 金銀色絵
表/長さ:3.44 cm 幅:1.41 cm 高さ:0.53 cm 重さ:4.00 g
裏/長さ:3.46 cm 幅:1.38 cm 高さ:0.54 cm 重さ:3.96 g
梔子の名の由来、知ってましたか? 当店も知らなかったので調べました。ある文献に、梔子の実は柘榴の実を細長くした形状で、でも柘榴のように実が割れず実の孔が無いように見えるためにクチナシ(口無し)とされ、それが古代の酒器(巵)に似ているので梔子と呼ばれるようになったそうです(そうなのか)。その梔子が画題になった理由は、色々あるようです。良い匂いがする、薬草とされた、染料とされた、食材にされた・・・かなり古い時代から重宝されています。刀装具としては“口無し”が忠誠心や堅牢さを連想させますね。
前置きが長くなりましたが、本題に・・・デザインとしては、実の組み合わせに花の配置を工夫して表裏目貫の動きと違いをみせて好感が持てます。外形もちゃんとラグビーボール状に整えています。(でも、この実、籾に似ていません? 籾殻のついた米粒かと思ったほどです。) 彫も丁寧でアバウトな感じはなくキッチリと仕上げていて、曖昧さがなくコントラストの効いた印象があります。面白いのは、実の表面に施した毛彫による筋と鏨で穿った極小さな凹み。毛彫の筋は全ての実に引っ掻き疵のようにつけて、実の風合いを表したのかもしれません。凹みはちょっと大きめの点の周りに小さな点々を九曜紋のように打っています。表目貫に4つ、裏目貫には3つ施されています。おそらくこれは、露玉(露象嵌)を模した表現ではないかと想像しています。色絵は金と銀(花部分)を施しているのに、露象嵌を凹みで代用するとは・・・手間と材料をケチったのかもしれませんね。
裏行からは桃山期以前の古さは感じられず、地板もちょっと厚め。それでも江戸中期以降の分厚い地板ではなく、圧出も鑽による痕跡がよく残っています。少し残念なのは底面が削られており、そのザラザラとした鑢痕が明瞭に確認できます。元来はもっと腰高で裾の立上りの括りもそれなりにあったはずです。足(根)は表裏ともありませんが、たぶん底を削った時に高さの調整か邪魔になったので取り去ってしまったのでしょう。足の切口にその際に付いたと思われるタガネの切痕が残されていて、十円玉のような素銅の色が確認できます。
時代は形状や造から江戸初期まで上がるかもしれませんが、ここは無難に江戸前期としました。極は後藤家でも十分に納得できる作域です。ただ先述したように、露玉ではなく凹みによるなんちゃって露象嵌がひっかかり、後藤家以外にするのが妥当だと思います。おのずと古金工になるわけですが、時代を考えれば京金工かもしれませんね。因みに、本目貫の鑑定書は古金工です。