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目貫
群兎図(無銘・古金工)
商品番号 :MK-224
桃山期 保存刀装具 桐箱入
130,000円
赤銅地 容彫
表/長さ:3.40 cm 幅:1.47 cm 高さ:0.64 cm 重さ:5.69 g
裏/長さ:3.45 cm 幅:1.48 cm 高さ:0.58 cm 重さ:5.09 g
こりゃー作るのが面倒だろうなと思ってしまう本目貫。何しろ表裏目貫とも五匹ずつの小さな兎が密集しているのですから。それぞれに顔と体があるわけで、向きや構図の組み合わせを思うと嫌になりそうです。おまけに抜孔もたくさん・・・手がけた金工には頭が下がります。しかし、本作より頭数の多い類例もありますし、鐔で見かける千疋猿の作なんかに較べれば、まだ楽な方なのかもしれません。
最初目にした時、表目貫はどっちだろ?と少し迷いましたが、おそらく一匹だけ正面を向いている方が表目貫でしょう。面白いのは顔の向きで、正面を向く一匹と右端の一匹を除いて残り三匹は後ろ(左向き)を向いています。裏目貫も真中下の一匹を除いて他が全て後ろ(右向き)を振り返っています。体の向きは多勢が向き合う格好なので、表裏の区別はこれで良いのでしょうが、違和感がなくもありません・・・ほんとは表裏目貫を逆に見てたりして・・・でも、正面を向く兎がいることで、やはりそれが表目貫でしょうね。敢えてこうした構図にしたのは、推測ですが躍動感や動きを見せるためでしょう。皆、顔も体も同じ向きなら面白くもメリハリもなく、単なる烏合の衆、いや兎合の衆となってしまいます。なので、これで良いのです。特に正面を向く兎は、デザインポイントとしてのファクターを十分に発揮していて、彼を中心とした各兎の動きを目で追わせることに成功しているわけです。(強引に誘導解説している気がします、すみません。)
混み入ったデザインの割に彫は簡素な気がします。鑑定書には書かれていませんが、元来、すべての目玉には金色絵が施されていたようで、その名残が所々に残されています。地板はどちらかと言えば薄目で、圧出も強く裏行は悪くはありません。括りもあり時代は桃山期頃としても良いと思います。少し時代が下がって江戸初期とみる意見もあります。地金は赤銅と書かれていますが、ちょっと黒さが足りない気が・・山銅と言われても仕方がない色合いです。とはいえ、群兎の図は愛好家にとってそれなりに人気の作。素材だー、彫だー、鑑定書だー、後藤じゃないのかー、とか言わずに、画題とその愛嬌でフォローしてほしいと思うのですが(いいね!ボタンをたくさんクリックする感じで)・・・野暮ですかね、やっぱり。