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揃金具

三所物

虎豹図(無銘・程乗)

商品番号 :SK-010

江戸前期 特別保存刀装具+保存刀装具+保存刀装具 桐箱入

500,000円

小柄・笄/赤銅七子地 金紋(据紋) 高彫(鑞付据紋) 赤銅象嵌 銀色絵 目貫/金無垢地 容彫 赤銅象嵌

小柄/長さ:9.55 cm 幅:1.36 cm 高さ:0.70 cm
笄/長さ:21.1 cm 幅:1.24 cm 高さ:0.52 cm
目貫/[表]長さ:3.54 cm 幅:1.68 cm 高さ:0.53 cm [裏]長さ:3.56 cm 幅:1.78 cm 高さ:0.49 cm

程乗に極められた虎豹の三所物。程乗ありきで作品を見ると評価に影響を及ぼしそうなので、あえて無視します。まあ、どのみち無銘の作品なのですから、そのつもりでご紹介しましょう。
まずは小柄と笄から。この二作は姿形は違えど、同じ造込です。どちらも地板嵌込で、その地板(額)に虎豹の金紋が象嵌されています。象嵌というより据紋ですね。その据紋ですが、何と上部からのリベット留めです。笄は2箇所、小柄は今のところ1箇所金のリベット痕が確認できます。やはり赤銅に金を据え付けるのは難しいのでしょう。金と赤銅をくっつける手法に芋継(いもつぎ)というのがありますが、この作例は稀なぐらい少なく、リベットを打ち込んだり根(足)をつけて固定するのが一般的なやり方だったと思われます。ただ、鑞付による据紋は金と赤銅の場合どうなのでしょう? 誰かご存知ありませんか?
話を戻します・・・小柄と笄は流水を高彫し銀色絵を施しています。この流水がさりげなく上品で美しいのにはちょっと驚きです。この手のデザインはやり過ぎると画題の主役を暈してしまいがちですが、本作のそれはなんのその、主役である虎豹を引き立て、かつ空間をさりげなく飾っています。さらに七子も緻密で整然と蒔かれ、ああ、後藤家の所作だなと思わせる出来です。目貫は、薄手の地板で圧出も強くかなり責めています。背も高く彫も上手なようですが、後藤家の個別の金工を極めるほど当店にはその鑑定力はありません(徐々に勉強します)ので、彫の評価は省きます。根は最初あったようですが、今はどちらも欠失しています。そして裏目貫の裏行内部に紙片が貼られています。これは一体? 当時の所持者でしょうか・・・文久年紀と名前らしき文字が・・・文久なら幕末です。それに地金への墨書や朱書ではなく紙片というのも腑に落ちません。これ以上は歴史の謎解きになるのでツッコミは無しにします。
三者共通の虎豹に関しては、金無垢という贅沢な地金。そこに赤銅の象嵌で斑点と縞々の模様を施しています。どの個体も同じ手法・・・ここまでくると本作は純粋な三所物と思われますが、実は違っているようです。小柄と笄は確かに対で作られた二所物です。しかし目貫は地金の色が異なり全くの別物でしょう。2+1の合わせ技を使った取合わせ物の三所物の可能性が極めて高いと思われます。同じ後藤家の金工同士の作なら、作域や技も同じか近似していても不思議ではありません。この目貫も同じ後藤家の金工か、またはかなり近い時期の金工と言えそうです。同じ金工の作だけど時期が異なる作というのも考えられます。
これらを踏まえた本作の極は3つの鑑定書がその答えのようです。3つ?・・・最初の鑑定書を紛失したらしく、改めて審査に出してしまった後に、失くしたはずの鑑定書が出てきてしまったようです。最初の鑑定書は三所物の特別保存刀装具で、そこには「無名・程乗」の表記が。後からの2つの鑑定書は、小柄と笄は同作とみて二所物で、目貫は単独での保存刀装具として審査。その結果は二所物の極が「無名・程乗」・・・さすがです、日刀保さん。最初のと同じ極、脱帽です。で、目貫の極はというと「京金工」・・・程乗でもなく後藤でもなく脇後藤でもなく、京金工?・・・そうなんだ、と思うしかないですね。やはり個別にではなく無理に取り合わせしてでも三所物として審査を受ければよかったのでしょうか。
そういうことで、本作には鑑定書が3つ付帯しています。三所物(小柄・笄・目貫)の特別保存(程乗)+二所物(小柄・笄)の保存(程乗)+目貫の保存(京金工)・・・とてもお得な一品となっています。(まいったな・・・保存の鑑定書を捨てちゃおうかな・・・いや、それは良心が許さないよな・・・) ならばここで一計。二所物は1セットで、目貫は単独で、それぞれ片方だけ所望する方にはご希望に応えれば良いと安易に考えています。もちろんその際には、特別保存の鑑定書はシュレッダーの餌食となりますが。それとも、すべての鑑定書を廃棄して無鑑でお譲りすることも考えられますね・・・ふ〜、悩ましき刀装具です。

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