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揃金具

二所物

乗逢舟図(無銘)

商品番号 :SK-011

江戸後期 桐箱入

売約済

小柄・笄/赤銅七子地 高彫(鑞付据紋) 金銀素銅色絵(一部金焼付) 銀素銅露象嵌 表裏哺金

小柄/長さ:9.63 cm 幅:1.50 cm 高さ:0.62 cm
笄/長さ:21.2 cm 幅:1.30 cm 高さ:0.52 cm

この二所物が入った桐箱には「乗逢舟」と書かれていたのでそのまま画題としましたが、人物の容姿が唐子ですからどうも中国故事の1シーンのような気がします。小柄には舟の上で囲碁を打つ人物、采配を持って立ち雲から覗かせる月を見つめる人物が描かれています。笄には寝転んで書物を読みふける人物に、舟を漕ぐ船頭が描かれています。どうやら水面に映る月を嗜む余興のようで、月を隠している雲が晴れるのを待っているのでしょう。波も荒れています。おそらく仲秋の名月を楽しむ悠長な舟遊びといったところでしょうか。満月は仲秋とは限りませんから題して「悠遊名月」ではいかがでしょう(勝手に創題しましたが、本来の題目をご存知の方はご教示ください。)
その風景を立体的かつ写実的に彫り上げている本作・・・抜孔はありませんが、まるで欄間のようです。人物一人一人、月、雲、老松、笹、岩、波、それぞれの特徴を捉えて巧みに彫り上げ、さらに金・銀・素銅で色付けし賑やかです。金の部分など、焼付や銀鑞による色絵を使い分けさえしており、見映えにこだわった優雅で贅沢な風合いを醸し出しています。
造は江戸後期の作ですから当然、地板嵌込。しかしこの複雑立体的な構図をした紋は果たして肉彫かと精査したところ、階層別に作り込まれた部材の鑞付のようです。波地、七子地、松や舟に人物・・・少なくとも2つ、もしかすると3〜4の階層に分かれているかもしれません。技術が進歩した江戸後期ですから、これぐらいの造込はやってのけたでしょう。それに彫のミスが最小限に抑えられるメリットもありますから合理的な手法です。愛好家としては、この階層構造を解明する楽しみがあります(逆に当店の見方が間違っていて、完全な肉彫の可能性もありますが・・・)。もちろん、楽しみ方は人それぞれ、構造や造込といった堅いことは置いておいて、雅味を楽しみたいという方も全然ありです。
ちなみに本作はまだ未審査です。審査に出せば、おそらく加賀後藤あたりに極められるのではないでしょうか。町彫の可能性もありますが、当店は町彫の知識が貧弱で推測さえ放棄状態。この辺に強い方なら絞り込めると思われます。ぜひ、教えていただければ嬉しく思います。

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