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鐔
桜花透図(無銘・武州)
商品番号 :TB-017
幕末期 保存刀装具 桐箱入
70,000円
撫角形 鉄肉彫地透 金布目象嵌 鋤残耳 毛彫 両櫃孔
縦:8.02 cm 横:7.57 cm 耳際厚さ:0.46 cm
鑑定書には桜花透とあります。確かに上下には桜花が彫り込んであります。では左右に彫られた図柄は一体何でしょう。・・・判りません。その領域を囲むように太目の縁で区切られた形状は、団扇のようにも見えますが、この時代は扇子のはずで途中から竹骨もありません。何かモノには違いないと思われますが、一段低くなった個所には金の布目象嵌と何やら松の葉のような花らしき模様が散りばめられています。桜に関係した何かを連想したいところですが、参りました、お手上げです。鑑定書に記載された画題も、唯一判る形状である「桜花」と書くしかなかったのでしょう。
画題はともかく、色付けに関してはよく見ないと判らない凝った所作がふんだんに盛込まれています。まずは桜の花びらの先辺り、金の露象嵌のほかに布目象嵌が施されています。左右の団扇の骨みたいな個所にも布目象嵌の跡が。そして一段低くなった個所には、象嵌を施すためか全面に布目の鑢痕があり、その上に金片が散りばめられ、松の葉のような文様が彫られているのです。様々な個所に布目象嵌を施すための鑢痕の所作が見てとれるのです。なかなか繊細な仕事をしている作のようです。
体配は丸目を帯びてフックラとした印象があり、艶やかで潤みのある鉄味はしっとりとしていて存在感があります。ちょっと上品で優雅な見せる鐔にも思えますが、決して派手ではなく実用的な強さも感じとれ、画題同様なんとも捉え所のない作といったら、本作に失礼かもしれませんね。