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鐔

大小鐔

菊花透図 (無銘)

商品番号 :TB-023

明治期 桐箱入

70,000円

大/丸形 鉄磨地 毛彫 地透 角耳小肉 片櫃孔 小/丸形 鉄磨地 毛彫 地透 角耳小肉 両櫃孔

大/縦:7.74 cm 横:7.71 cm 切羽台厚さ:0.51 cm 耳際厚さ:0.53 cm
小/縦:7.72 cm 横:7.70 cm 切羽台厚さ:0.52 cm 耳際厚さ:0.53 cm
菊花透の大小鐔と言いたいところですが、まずは画題がはっきりしません。葉の形状からして菊に思えるのですが、全く自信はありません。何となく菊花とした次第です。ちょっと変っているのは、その菊花を横から見た構図でデフォルメしている点でしょうか。大概の菊花は円形の花を描くものですが、本作は蕾が徐々に膨らみ開く様を半時計回りに・・・ん、まてよ、花が開くのではなく閉じていく順序に・・・笄櫃を右にした表面なのに、半時計回りの流れはいいとして花の開く順序が逆とは。何を表しているのかわかりません。考え過ぎでしょうか。
まあ、画題はこれくらいにして、大小としての疑問があります。実は本作、寸法を見てもわかる通り、大小ともほぼ同寸なのです。どこを計っても違いは僅か0.02ミリ前後。これはもう製作時における誤差の範囲内です。通常の大小鐔は、小が一回り小さい(僅かですが)のが一般的。というより同寸の大小鐔は初見です。ん〜ほんとは大小ではなく、それぞれ個別に作った鐔?と思いたくなります。しかし、大の櫃孔は小柄櫃孔がない片櫃孔。小は両櫃孔が空いていますから、やっぱり大小揃いの鐔かと思われ、現在こうして二枚揃って存在しているのも、大小として扱われてきたとしか考えられません。なぜ同寸にしたのか、誕生の経緯が謎に包まれています。画題のデザインも全く同じに見えますが、こちらは所々形状が異なる個所があります。型がある鋳造かどうかは判断の別れる所ですが、少なくとも個別にカスタマイズされていることは確かなようです。
後の謎解きは皆さんにお任せします、と無責任に話を変えて、本作の時代はおそらく明治。と言ってもこれも信憑性は全くなく、あくまで“伝承”の話として、明治の高名な刀剣商「網屋」が作らせたものと聞いています。網屋といえば江戸から続く刀剣商で、明治に入って上出来の拵などを製作して高い評価を得た名店です。これを信じれば、新しさを感じるデザインや地金、錆付を経た状態から納得出来ない訳でもありませんが・・・ただ、そこまでの高級品かと言えばそうでもなく、全体的に上品さはあるのですがいたって普及品と言える代物です。個人的には奉納刀に装着するような鐔のイメージがしない訳でもなく、時代も幕末を期待したいのですが・・・。本作もそうですが、刀、小道具の類いで“伝”がついた作というのは、極が厄介なものですね。それを保証する物証や理論も乏しく曖昧模糊なのに明記してしまうことに少し違和感を覚えます。“伝〇〇”ではなく“〇〇風”としてくれた方がまだ納得出来ると思うのは当店だけでしょうか。

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