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鐔

笛吹童図(無銘・水戸)

商品番号 :TB-028

江戸後期 保存刀装具 桐箱入

売約済

丸形 四分一七子地 鋤出高彫(鑞付据紋) 金銀素銅象嵌色絵 角耳小肉 両櫃孔

縦:7.09 cm 横:6.88 cm 切羽台厚さ:0.42 cm 耳際厚さ:約0.42 cm
鑑定書には地金が四分一と書かれていますが、本鐔の地金は赤銅だと思われます。四分一特有のベージュがかった色合ではなく、黒々とした赤銅の色に見えるのですが(それとも私の眼が曇ってきたのか)・・・。それと鋤出高彫ですが、厳密には表裏共、せせらぎと川岸だけが鋤出彫、童・柳の樹・笹の葉・小岩は高彫の鑞付据紋です。後から鑞付した紋に隠された半円形状の七子の形状がいたる所に確認できます。鑑定する日刀保の方々はこういう所作をどう捉えているのでしょう。見た目で判断出来る据紋ならば鑑定書にもそう書いてあります。もしかして、高肉彫と高彫(圧出も含め)据紋は「高彫」で統一表記しているのでしょうか。
疑問はこのへんにして、本鐔の見所は何といっても七子地の見事さ、そして微小な粒の細かさに驚かされます。ぐるっと耳まで整然と穿たれ敷き詰められた光景に、根気づよく鏨を打つ金工の姿が重なります。日の光にかざすと七子地がキラキラと煌めき、まるで黒い宝石を見ているようです。いや〜実に細かく、ルーペで見れば機械ではなく手で一粒一粒打った様が見てとれ、職人気質が伝わってきます。「金工鐔工・刀の小道具」(神谷紋一郎著・昭和38年刊)という本に七子師の仕事を紹介している項があり、その小見出しはなんと“発狂につながる七子まき”・・・「くる日もくる日も、ひとつぶずつ点を打っていくという〜」こんな件(くだり)からもわかる通り、あまりにも単調な作業に発狂した職人がでたと紹介しています。背筋がぞっとする話ですが、それくらい七子を奇麗に揃えて打つのは大変で、それを思うと本鐔の七子師に敬意を表しないわけにはいきませんね。こんな見事な本鐔ですが、なぜか無銘です。鑑定書にある水戸金工かどうかは別にして、これほどの力作が無銘とは・・・七子師の力量はあくまで陰に隠されて表には出てこないものなのでしょうか。

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