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鐔

松樹落雁透図(無銘・江戸赤尾)

商品番号 :TB-035

江戸後期 保存刀装具 桐箱入

70,000円

竪丸形 鉄地 地透 毛彫 丸耳 片櫃穴

縦:7.27 cm 横:6.92 cm 切羽台厚さ:約0.48 cm 耳際厚さ:約0.42 cm
松樹に落雁の図。透鐔の中ではどちらも普遍的な画題を組み合わせた図柄です。構図の動きも左回りに展開、デザインとデフォルメ、彫の所作に造込、どれをとっても写です。本歌ではありません。この鐔の本歌は何か?と探しても、おそらく絞り込めないでしょう。それくらい曖昧で基準もなく、高名な誰かが本歌だ、古い、出来が良い、と称えればそれがまかり通ってしまう世界です。ま、この手の論議は無意味になりつつあるので無視しましょう・・・となれば、本鐔の紹介は私見で語るしかありません。かなり勝手な解釈と思ってください。
構図の動きはきちっと反時計回りで、動きを一見して認識できるように計算されています。バランスも良く、松樹のゴテゴテと雁が降下する様を斜目の繊細な線で対比させる強弱の表現が効果的です。この意図が見所の一つになっているようです。しかし、他の類例もそうですがこの細い線は折れないのかと思う所作で、まじまじと見てしまう危うさがポイントなのでしょうね。大概の皆さんは、手に取れば必ずそれを確かめるでしょう(この予想には自信あり・・・当たり前の行動ですか)。デザイン的なアイデアからみれば、3羽目の雁が小柄櫃孔を形作っていることに気付き、雁の躰をしなやかに曲げて櫃孔とする繊細なイメージが印象的です。では笄櫃穴は?・・・こちらも櫃孔となるように松の枝葉を配置しているようです。最初から櫃孔とわかるように縁を施した櫃孔と、こうしたデザインの形状を利用した空間を区分けする定義ははっきりしません。鑑定書でも、文献でもまちまちです。あまり意味のないことかもしれませんが、本鐔に関しては左右の孔に責金が施されているので、両櫃孔としてもよいのかと。でも、この責金は候補・・・じゃー片櫃孔? でも作者はそれを意識してデザインしたことは読み取れます。・・・ほんと、鐔は難しい。正直に見たままの所作を伝えるのが精一杯です。
造込や画題やデザイン、錆色合と状態から本鐔の時代は江戸後期。そして無銘・・・江戸赤尾と極められていますが、如何せん無銘です。無銘ですから色々と手を加えて古赤坂とすることも・・・あ、こっから先は禁断の領域。この辺で失礼します。

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