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鐔

蔓葵図(無銘・埋忠)

商品番号 :TB-044

江戸後期 保存刀装具 桐箱入

売約済

竪丸形 鉄磨地 銀・真鍮平象嵌 毛彫 鋤残土手耳 両櫃穴

縦:5.25 cm  横:4.10 cm  切羽台厚さ:約0.45 cm  耳際厚さ:約0.43 cm

小振りな、短刀用の鐔。寸延び短刀ぐらいの脇指にも装着できそうな・・・小さいながら見た目は賑やかな象嵌が施されています。さも高級そうで品格のあるイメージを狙った感じがします。一見そう見えるでしょうが、そこまで手の掛けた鐔ではありません。まず、象嵌は金ではなく真鍮と銀であること、そして耳に施した象嵌が中途半端で、ぐるっと囲んでいないこと、何より銘が刻られていません。無銘ですからね(まさか献上品とかの言い訳はなしです)・・・そういった視点から見れば、本鐔は中級品。時代を敢えて下げてみるなら、明治の輸出品とされるかもしれません(多少ならず、そう思っています)。とはいえ、鑑定書には無銘・埋忠の極がありますから、それを尊重して江戸後期の作とするのが良いかと。埋忠ですからね、期待したいところですが埋忠はたくさんいますし、工房の一人か一門か、埋忠風の所作なり作風だということでいかがでしょう。何しろ埋忠は名門ですから。
随分と懐疑的な書き方をしましたが、造に関してはまた別の話。彫、特にこの平象嵌は丁寧で、デザインの構図もよく考えられています。耳まで意識した構図だったらもっとよく仕上がったのでしょうが、そこは目をつぶりましょう。数カ所、葵の葉に銀をあしらったのは好印象、さらに鋤残土手耳は上手で、鐔全体に優雅さや上品さといった趣を出すことに成功しています。ただし、細かい点を見ると、平象嵌を縁取った毛彫がやや雑なのが少し残念です。まあ、普通に肉眼で見れば、全然気にならない所作です(実際はそれなりに印象が変わると思われます)。このような本鐔ですが、細かな所作ではなく、見た目の雰囲気や印象といった好みが優先される鐔なのかもしれません。へたなこだわりや時代を求めては、本綱に対して失礼ですね。総じて一言・・・ぱっと見、女性的で惹かれる作です。

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