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鐔

菊花散図 千寿院紀正信

商品番号 :TB-045

江戸後期 保存刀装具 桐箱入(寒山箱書)

160,000円

障泥木瓜形 真鍮磨地 鋤下毛彫 左右松透 真鍮縄目覆輪耳

縦:7.53 cm  横:7.10 cm  切羽台厚さ:約0.37 cm  耳際厚さ:約0.42 cm

真鍮の鐔も、こうして錆がつき山銅のような色合いになると独特の風合となって良いものです。新しそうで新しくなく古そうで古くない・・・何というか鉄や赤銅には真似のできない雅味を感じます。本鐔は覆輪を見てもわかる通り使い込まれていて、錆び方も所々濃淡が混在し状態としては評価しにくい面があります。考えてみれば、もし本鐔の所持者であったなら、愛着の持てるではなく、愛着が湧いてくる鐔だと思うのですが、皆さんはどんな印象を想像するでしょうか。色絵もなく高彫でもないので、一見、派手さは全く感じられませんが、鋤下毛彫の菊花が四方八方に点在して粋なデザインを展開しています。まるで壁紙のように彫と平地が一緒になった地紋、それが主役で脇役が縄目の覆輪と左右の松透・・・それ以上もないしそれ以下もない。地味だけど小粋なデザインです。
本鐔の鋤下毛彫は曲線の彫が巧みで、角ばったり厳ついところもなく丁寧です。躊躇った彫跡がないといったら持ち上げすぎかもしれませんが、相手となる画題は植物です。ぎこちない線だったら枯れた菊花になりかねませんが、うまく処理しています。気になるのは二個所の朽込で、その上から彫を加えていることで意図的に施されたことが明確です。目を向けさせるためのポイントでしょうか。確かにアクセントにはなっていますが、余計な所作だったのかもしれません。(この点に関しては、くれぐれも当店の感想など気にしないでください。)
ところで本鐔は二振の刀に装着された可能性があります。中心櫃孔の縁にある丸い鑚痕は、刀の中心の重ねに合わせて地を寄せた跡でしょう。身幅の割には重ねが薄いことを考えれば、新々刀の中心かもしれません。本鐔が作られたのも江戸後期ですから整合性は取れますが、当店の見解ですので信用はしないでください。作者は千寿院紀正信。刀装金工事典には「紀姓を称した。千寿□紀正信と銘した菊花図の鐔がある。江戸時代後期。」とあり、おそらく、本鐔のことを指していると思われます。寒山氏による箱書では「不知幕末ノ肥後金工也」とあり、知見はないが幕末の肥後金工だろうと記しています。詳細はここまで。どなたかご存知でしょうか?

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