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鐔
千鳥之図(無銘・西垣後代)
商品番号 :TB-048
江戸後期 刀苑社認定書 桐箱入
売約済
撫角形 鉄磨地 高彫 変り金象嵌 銀象嵌 土堤耳縄目紋 両櫃孔
縦:8.17 cm 横:7.58 cm 切羽台厚さ:約0.47 cm 耳際厚さ:約0.52 cm 紋部厚さ(最大):約0.60 cm
千鳥之図という画題から想像するには少し手間取る構図となっている本鐔。表側には雪を頂いた富士山と雲。富士の上方にたなびくのは霞でしょうか。裏側には干網と下部に霞らしきものか、それとも海? そしてまばらに配したヒラヒラっとした窪みがおそらく千鳥。表を見返すとやはり同じヒラヒラの窪みが・・・こう認識すると不思議なもので、ヒラヒラした形状が鳥にみえてきます・・・しかしこのデフォルメは大胆です。ただ、よくわからないのは、表裏どちらにもある高彫と区別するためか平地から抉った線。高彫にした富士と干網を際立たせるための所作なのか、霞んだ広い空間を表したものか、それとも両方の効果を狙った所作なのか・・・どちらにせよ、富士を取り巻く情景を千鳥を介して描いた構図ということでしょう。
見所は難儀な構図もそうですが、施された色絵に注目です。富士の山肌には広がる稜線に合わせて細かい筋状の金象嵌。干網はまさに網を線で描いたかのような金象嵌、その下の岩(海?)みたいな領域は乱雑な細線が繋がったような(言葉で伝えるのはは無理かな)・・・しかし、みな布目象嵌ではないことは確かです。認定書には「変り金象嵌」と記載されています。そしてもう一つ、富士の雪の頂を表現した銀の象嵌が面白い所作を見せています。厚い銀板をかなり立体的かつ写実的に被せています。おそらく下地も盛上げた高彫だとは思いますが、この雪の頂は強烈です。まるでアクセントのような所作で、仰々しくもあります。そう見れば体配も同じで、表側は高彫の部分が平地や土堤耳より高く、どうだと言わんばかりの造。耳には縄目紋も施されており、見方によっては贅沢な造込です。
何とも落とし所のない鐔ですが、たくさんのユニークな所作が見れる面白さがあります。認定書の極は後代西垣。確かに、賑やかな金象嵌や銀象嵌の所作、風合いも肥後鐔らしいと言えばそうですが・・・西垣の後代に逃げた・・・と言ったら掃剣(村上孝介)氏に失礼でしょうか。とはいえ、当店が極められるほどの鑑定力はありません。掃剣氏、ご無礼をお許しください。