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鐔
秋草図(無銘・古金工)
商品番号 :TB-061
江戸初期 保存刀装具 桐箱入
190,000円
竪丸形 赤銅七子三枚仕立地 高彫 象嵌色絵 共金覆輪耳
縦:8.02 cm 横:7.66 cm 切羽台厚さ:約0.40 cm 耳際厚さ:約0.45 cm 紋部厚さ(最大):約0.52 cm
葉を唐草風にデザインした撫子はパターン文様のような構図、一方の菊は横から眺めたやや立体的な構図、どちらも上向きに展開し上部に余白を設けています。見方によっては視点の違う構図を同じ画角に配したデザインで、エキゾチックかつ和風の印象という併せ技を使った反則気味な鐔です。もう一つ、反則的な配置が・・・造が三枚合ながら表裏違ったデザインは高級感ある上手作を思わせるのですが、片や撫子が菊より低く、反対側はその逆。普通に考えればデザインの賑やかな方が表で、どちらも右側に来る撫子がメインとすると、あれれ?、表だと思った側の撫子が菊より低いではありませんか。うむむ・・・中心櫃孔の責痕をみても、やっぱり表はこっち・・・まあ、撫子の上方に蒔かれた露象嵌もデザインの一部と考えれば、一応筋は通るということで不問に。
画題そのものの表現は上手です。撫子の花弁の筋まで丁寧に彫り、唐草風のラインも緩やかで厳つい個所はありません。そして七子は縦、小柄と笄櫃孔もありません。こうなれば古く極めるのは知れたこと。鑑定書はやはりというか常套の古金工です。画題が秋草にもかかわらず、古美濃にしなかったのは何故でしょうか。画題の彫が低く、鋤出風ではなかったからでしょう(正しいでしょうか・・・一抹の不安が)。しかし何ですよ、この高彫は、鑞付据紋の可能性が極めて高いとだけは自信を持って言えます。(疑問に思う方は直接ご覧ください。ご来店して経眼いただくことは大歓迎です。)ちなみに、本鐔の桐箱には前所持者の強い思いが貼り付けられた和紙に書かれています。「美濃後藤派金工の都時代の古作で・・・わづかにウットリ色絵を施し・・・昭和甲寅新春 笙岳起雲洞人」・・・笙岳起雲洞人という号を称した愛好家の方は古美濃への強いこだわりがあったようです。だた、本鐔の彩色はウットリではなくアマルガムによる鍍金です。秋草という画題と見た目から古美濃とされたのでしょう。しかし彫は鋤出ではなく低い高彫(鑞付据紋)。こうした造も踏まえると、時代は古くても江戸初期。それでも鐔の中ではかなり古い方で状態の良い上手作、大切にしたいものです。