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鐔

冠透図 水戸住 節愛作

商品番号 :TB-063

江戸後期 特別保存刀装具 桐箱入

250,000円

丸形 鉄鍛目地 陰透 糸透 角耳小肉

縦:8.22 cm  横:8.08 cm  切羽台厚さ:約0.40 cm  耳際厚さ:約0.40 cm

この図柄を初めて見て冠(垂纓冠)だとわかる方は、たぶん(ほとんど)いないでしょう。何の図柄か惑わす要因は二つあると思います。その一つは、影絵風の陰透になっていること。もう一つはその陰透が切羽台によって絵柄の一部(後部)が遮られているため、画題である冠図の全体像が把握しにくいためです。それでもって房紐がぐるっと回り込んで反対側にあるため、冠とは全く別の形状を連想させてしまうようです。当店などは、鑑定書の画題を見るまで、蝶だとばかり思い込んでいる始末です。そうなると蝶にしか見えなくなります・・・冠が揚羽で房紐は触覚です。デザイン自体はかなり斬新な構図で、緩いアールを主体としたラインは繊細かつシャープな印象・・・前衛的な感じもします。作者のコンセプトからすれば、少し韻を踏んだデザインであり解りづらさがインテリジェンスの匂いがして、好みの分かれる作かもしれません(当店は何を偉そうに言っているんだか! 身分を弁えて反省します)。ちなみに本鐔には小柄櫃孔が空いていません。笄櫃孔は絵柄とぶつかるのであり得ませんが、もし、小柄櫃孔が空けられたら・・・それこそ蝶そのものに見えちゃうかもしれませんね(でも、違和感は中途半端なく、正直、空けられなくて良かったです)。
作域の評価は迷いません。良い出来です。平地の鍛目地(槌目地と言って良い鍛)の風合い、陰透の切り抜いた側面の処理、どちらも丁寧で叢がありません。そこに繊細な糸透・・・この糸透、始点と終点がきっちりと閉じています。切り通したのを閉じているのか、寸止めしているのか判別できませんが、細かな個所まで丁寧さが行き届いています。一見、何のこともない小透に見えますが、至る所に作者の技術が込められた作に仕上がっています。
作者の節愛(ともちか)は杉山氏で水戸住の巧手とあります。板鐔に影絵式小透にした鐔があると書かれて入り、本作もまさにその一例です。

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