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鐔

時雨鑢刻図 土陽臣輝美 以刃鉄造之 嘉永七年二月日

商品番号 :TB-067

江戸後期 桐箱入

80,000円

撫木瓜形 鉄磨地 毛彫 打返耳 両櫃孔

縦:8.07 cm  横:7.50 cm  切羽台厚さ:約0.36 cm  耳際厚さ:約0.42 cm  重さ:126 g

シンプルながらもシャキッと精悍な顔つきをした本鐔。均一に鍛えられた平地は、錆の色合いといい肌の質感といい精鍛された鉄の様相を見せてくれます。思わず音を確かめたくなります・・・チーンと澄みきった音色が響き(音色が良い=出来が良い、と誤解してはいけません)、なるほどと勝手に頷き、自己満足。添銘に刻った「以刃鉄造之」という語句に納得です。そうです、本鐔は刀を作る鉄地を鍛えた作。そして作者自身も刀匠です。言うなれば本物の刀匠鐔です。よくよく見れば、鐔工ではなく“刀匠が作りました”という特徴が随所に表れています。先にも述べたようにシンプルです。よく鍛えられた質感もそうです。やっぱり刀匠の作は実用本位になるのでしょうね。形状はなだらかな撫木瓜に打返の耳、ほんのわずか0.1〜0.2ミリほど切羽台部が低い中低で、見事な平地に鍛え上げています。紋のデザインはその平地に斜目に刻った時雨のような線刻だけ。長さと太さに強弱をつけて、左下から右斜め上に掻流です。全面には施さず表裏の空間を意識したレイアウトは、時雨ではなく陽射しなのかもしれません(銘に土陽臣と刻っているのは韻を踏んでのことなのかも)。ともあれ、洒落たというかやり過ぎないというか、作者のセンスを感じます。そしてこの一糸乱れのない刻線、刀の中心の鑢目のイメージと重なります。作者本人の作は未見なのでわかりませんが、筋違(できれば逆筋違)だったら妄想はMAX(何でもかんでも作域を刀匠に関連付けしてしまうことをご容赦ください)。
本鐔の作者・刈谷輝美は銘にもある通り土佐の刀工。尾崎助隆のちに水心子正秀の門人だった土佐英吉が師匠です。その輝美には坂本龍馬に依頼されてつくった刀と鐔があり、その鐔は全面に時雨模様を施した作で、安政三年二月日と年紀が刻ってあります。本作は嘉永七年、すでにこのデザインのモチーフを本鐔等でやっているようで、輝美のオリジナリティを強く感じます。因みに、輝美は土陽臣とありますから、身分は土佐藩の武士と考えてよいのでしょうね。

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