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鐔

波図(無銘)

商品番号 :TB-068

桃山期 桐箱入

90,000円

竪丸形 山銅波彫地 肉合彫 毛彫 金袋着色絵 銀露象嵌 丸耳 両櫃孔(片埋)

縦:6.23 cm  横:5.65 cm  切羽台厚さ:約0.34 cm  耳際厚さ:約0.32 cm  重さ:68 g

小振りな山銅地の本鐔、厚みも一分強しかなく、古風な風合いが滲み出る銅鐔ですが三枚合の鐔ではありません。無垢の山銅に波地を彫り上げています。その波のデザインはちょっと変わっていて、それが本鐔の大きな特徴となっているようです。
よくある波地のデザインは、波の向きが左右に展開するのが一般的ですが、本鐔の波は中心櫃孔を起点として360度放射状に展開しています。波の表情を表した線彫のニュアンスと相まって、まるで逆立ったライオンの鬣のようにも見えるし、燃え盛る太陽の炎のようにも見えます・・・面白いデフォルメの形状です。彫口も強弱のあるし肉合彫が躍動感たっぷりの表情を作り出しています。おまけに表裏のデザインも異なって、十分すぎる手彫り感が伝わってきます。同じような銅鐔と一線を画すようなデザインと風合い、強烈なオリジナリティを感じます。そして彩色は、波頭に施した金袋着に金と銀の露象嵌。ただ、この露象嵌は金と銀の露玉を埋め込んだ所作ではなく、焼付か色絵のようです。とはいえ金袋着が施された本鐔、時代は十分に古く桃山期は降らない古金工の作。山銅鐔や赤銅の三枚合鐔を何でも一緒くたに古金工とされる類と一緒にしてはいけません。本鐔は江戸中期以降の成り済ましの古金工作とは違います。
造の所作を見ると、小柄・笄櫃孔はどうやら後補のようで、小柄櫃孔の側面切口には切り取った跡のギザギザが明瞭に残されています。色絵といい彫口といい結構丁寧な作なのですから、この加工にはちょっと残念ですが、後補だとすれば別な金工の所作、仕方ないのかもしれません。しかし笄櫃孔の形状は外側の中央部が尖っていて、古い時代の形状を意識させます。・・・一見、ペラペラの安っぽい銅鐔にみえますが、所作しかり風合いしかりかなり時代の上がる価値ある本鐔。古金工という代名詞そのままに地で勝負できる一品です。

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