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鐔
笹の葉図 江府住 佐久間宜秀
商品番号 :TB-070
江戸後期 桐箱入
100,000円
堅丸形 鉄地 肉彫地透 毛彫 角耳小肉 片櫃孔
縦:7.17 cm 横:6.86 cm 切羽台厚さ:約0.50 cm 耳際厚さ:約0.42 cm 重さ:109.37 g
精鍛という響が似合う鉄質というか鉄味の本鐔。鈍い輝きを放ちながらも薄っすらと茶を帯びた錆色は、決して“育てられた”黒味を帯びた錆色ではなく、この鍛えられた地鉄が本来持っている性質が自然に出た色合いに思えます。この質感と錆色をした鉄味の鐔は、少ないわけではなく江戸後期の作によく見受けられ、その多くはデザインはともかく出来と品質は上等な作に思えます(こればかりは主観なので、私個人の感想ということで・・・)。一見、精巧な造込を印象付ける一方、穿った見方をすれば古雅な味わいのない無機質な印象を受けますが、良し悪し・趣向の選択は皆さんの範疇に。
画題は笹の葉。葉先を内側にして切羽台を包み込むように円形状に配し、葉の形状を巧みに組み合わせたデザイン、凝ってます。二枚の葉は破れ(虫食い?)の跡を表現し、描写のポイントを捉えることも忘れてはいないようで、抜かりはありません。地透の彫ですから裏面も葉の表現は同じかと思えば、葉の重なり方が全て逆に描かれていました。表面で上になっている葉は、裏面では下に回り込んでいるのです。やるじゃないですか。葉の描写も滑らかな凹凸で立体感を出し、実用に支障がない程度に仕上げています。実用といえば小柄櫃孔は葉の破れをうまく利用して空けています。笄櫃孔も葉を捲った感じでスペースを確保しているように見えます。しかし、この孔の大きさ、特に位置どりでは通常サイズの笄は入らないと思うのですが。小型の馬針を想定したのでしょうか、それとも元々笄用に空けた孔ではないのかもしれません。
本鐔の作者は佐久間宜秀(よしひで/号・遊翁斎)。金工事典には江戸住で巧手とありますが、どこの流派かと調べても詳細がよくわかりません。どこの一派にも属さない独立系とする表記がありますが、これほどの作を独学でやれるのかは疑問です。どこかと繋がりはあるはずでご存知の方は教えてください。因みに「桜花透鐔 銘江府住佐久間宣秀」という彼の作が京都国立博物館に一枚所蔵されているようです。名前の「宜」が「宣」と間違って紹介されているようです。興味にある方は「桜花透鐔 銘江府住佐久間宣秀 文化遺産オンライン」で検索すると、その鐔の画像がご覧になれますのでご参考にしてください。