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鐔

丸に片喰紋透図 長藩正幸作

商品番号 :TB-071

江戸後期 保存刀装具 桐箱入

250,000円

堅丸形 鉄磨地 肉彫地透 角耳小肉 無櫃孔

縦:8.47 cm  横:8.00 cm  切羽台厚さ:約0.43 cm  耳際厚さ:約0.40 cm  重さ:147.87 g

片喰(カタバミ)の紋を地透にしています。三枚あるハート形の片喰の葉が接する所には隙間があるはずで、家紋として描かれる形状にもその隙間があります。ありました・・・本鐔もちゃんと隙間を空けており、抜かりなく彫られています。外側をぐるっと太い縁(耳)で囲っていますから、「丸に片喰」の家紋を画題としたのは明らかで、自生する葉っぱを描いたわけではないようです。表面も磨地で葉脈などの彫はどこにもありません。なので、ザラついた感じは一切なく鐔全体が鈍い光沢を放っています。いたって簡素な風合いですが、丸味を帯びた肉置豊かな体配に仕上げており、その存在感というか重厚感ある姿が印象的です。でも何故かアタリがソフトというか・・・切羽台を除いた片喰の葉と耳それぞれの外形の縁を、碁石形のようになだらかな丸味をつけて組み合わせて、陰影を作り出し立体感を演出しているからでしょうね。人間の顔に例えるなら、膨よかでハリのある大きな顔がドーンとあるような・・・なんかスリスリしたくなるような(おっと失礼)・・・
シンプルながら、存在感と高級感が感じられ一種独特の個性を見せる本鐔。長州鐔の中ではちょっと異彩を放つ一枚かもしれません。ただ、家紋を画題とした鐔ですから、長州鐔の作域としてみるのはどうかと。それに注文作の可能性も高く、金工独自のオリジナリティがどうのこうのと突っ込むのも野暮な話です。もちろん、作者である正幸が精鍛した地金の質感は十分に感じられるし、角を落とした丸味のある彫口にもその工夫と技術が現れています。この鐔は、あれこれと細部を評価するのではなく、最初の一見、その印象に尽きるのかもしれません。もちろん、細部まで丁寧に彫り込んだ所作の裏付けがないと空威張りの鐔となってしまい、本質はすぐにバレてしまいます。本質と基本あっての上作であり、本鐔もその一枚だと思います・・・ちなみに作者の正幸ですが、藤原姓を称した正幸で、号は蘭花亭。同じ長州で萩の綾部正幸ではありません。

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