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鐔

大小鐔

唐草文図(無銘・古金工)

商品番号 :TB-073

江戸中期 保存刀装具 桐箱入

売約済

木瓜形 山銅石目地 毛彫 露象嵌金色絵 土手耳 片櫃孔

大/縦:7.83 cm  横:7.76 cm  切羽台厚さ:約0.40 cm  耳際厚さ:約0.55 cm  重さ:149.17 g
小/縦:7.01 cm  横:6.93 cm  切羽台厚さ:約0.35 cm  耳際厚さ:約0.50 cm  重さ:113.24 g

鉄地ではなく山銅の大小鐔、たまに見かけたりはします。滅多にないとは言えませんが珍しい類に入れても良いのかと思います。なんで珍しいかと言えば、そりゃー山銅の古金工作なのに大小揃いの鐔だからです。
古風な風合いを持った山銅鐔は鑑定書にもあるように古金工と極められる作が多いのです。山銅で尚且つ唐草や波の紋様があると一様に古金工とされる傾向が。そして古金工=室町期・桃山期と断定されてしまいます。この風合いやイメージによる捉え方は正誤両方を内包しているにもかかわらず、偏った視点が強くまかり通っているのが現状です。じゃー、各視点から本作を見て突っ込んでみましょう。
造は山銅地の無垢で三枚合ではりません(ある意味、贅沢)。姿は木瓜形(古いされる形状はもう少し喰い込んだ入木瓜形に近い形状と云われます)。厚みは切羽台から耳際に向かって微妙に薄くなり、耳は覆輪ではなく土手耳(基本、型取りからの整形)。平地は石目地ですが、大の方は斜目の細かい刻線が揃い気味、対して小は線刻というより不揃いな凸凹地(こんなに差があるとは)。そこに甲鋤彫で唐草紋を彫っています。紋様は表裏異なった形状ながら、大小はほぼ同図(ややパターン化されたデザイン展開)。全面に施されている露象嵌は金色絵(鑑定書では銀色絵と書かれていますが、実際は金色絵です)。責は中心櫃孔の周囲をぐるっと抉った所作(表面側)で、大の方は補修の責金が上下ではなく右側縦に(小は痕跡が少なく、大小共に装着した使用頻度が推し量れず残念)。
この事実から、本鐔の時代と品質について皆さんの推論を聞きたいものです(誘導尋問のような事例を挙げてズルいと言われるのは覚悟の上で)。ただ、これらを考慮しても、アバウトな推論しか出せないでしょうね。では、本鐔が古金工(=桃山・室町期)だとして、引っかかる点を・・・七子地ではなく石目地、紋様がパターン化されたデザイン、切羽台に施された、さもデザインしました風な花びらのような刻跡(小の表側だけにはない)、無垢の土手耳・・・これらを考慮すれば、あっても江戸前期、あるいは江戸中期の作かもしれません。それに反し、古いとされる推測もあります。大小とされる本作ですが、実は取合せの大小かもしれません。もちろん同じ工房の作という前提ですが・・・石目地の所作が異なっている点、地金の色がやや異なっている(目の錯覚かも)点、大小にしては大きさに差がありすぎる点など。これらが示すのは、大小としてセットで作られたのではなく、同じ工房で別々に作られたバージョン違いの作ではないかと。そうだとすれば、時代は多少上げられます。大小鐔という概念は、江戸前期以降にみられるもので、揃い=見せる概念です。縁頭しかり、揃金具しかりです。
色々と屁理屈を並べましたが、古い新しいの言い訳はどれもこれも決定打とするには根拠が弱いものばかり。最後は好き嫌いの価値観です。当店の視点は、あくまでその参考に・・・。

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