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鐔

鉄線花図(無銘)

商品番号 :TB-075

江戸後期 桐箱入

売約済

木瓜形 山銅七子地 三枚合 金色絵 耳銀覆輪 両櫃孔(両埋)

縦:7.43 cm  横:6.80 cm  切羽台厚さ:約0.40 cm  耳際厚さ:約0.40 cm  重さ:122.10 g

金と黒のコントラストが鮮やかな本鐔。耳には少し贅沢な?銀の覆輪を施し、絵柄をシメています。とてもゴージャスな鐔に映りますが、どこか粗い感じがしてシットリと来ないというか・・・画題は鉄線花。花と葉に金色絵を施し画角一杯に枝葉を広げた賑やかなデザイン。上作を装うためか、ちゃんと表裏異なったデザインに・・・表面は枝葉が上から下に、裏面は下から上に広がる構図で・・・お、おやおや、これはもしかして?・・・何と、全く同じ構図を180度ひっくり返しただけではないですか。これは違ったデザインに見せるためなのか、はたまた間違って作ってしまったのか、理由は判らずとも“してやられた”感があります。こういう事例もあるんですね、工夫なのか失敗なのかは別にして、騙し絵的な効果を十分発揮していることには違いありませんね。
欺くという点ではもう一つあります。本作は赤銅の三枚合鐔に見えますが、実は違います。赤銅ではなく表板の地金は山銅か素銅のどちらかです。真黒な赤銅地に見えますが、おそらく色揚をし直したか、墨のようなものを塗布したか、小柄・笄櫃孔の埋金にその跡がこびりついています。道理で浮いたような色合いに感じるわけです。彫だって緻密に見えますが、この高彫に見えているのはプレスによる造形です。鑽痕などは縁にしかなく、紋様を拡大して見ると型取りした丸味を帯びた表面が確認でき、かなり技術が進化した頃の型取りの三枚合鐔ということです。つまりは本鐔、時代は江戸後期に作られたかなり若い作。造と風合いで古金工に成りすましている巧妙な鐔・・・しかしこの評価は正しくないのかもしれません。きちんと所作や造を見れば古金工などと極める過ちはしないはずなのです。イメージだけで見てしまう鑑定者もいますが、そういう人に限って三枚合の鐔は古いなどという固定概念を盲信しているのでしょうね。因みに、本鐔を審査に出してみたら・・・いえいえ、そんな勇気など当店にはこれっぽっちもありません。

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