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鐔

素紋図 近江守継平

商品番号 :TB-076

江戸後期 桐箱入

売約済

堅丸形 鉄磨地 手抜緒孔 角耳小肉

縦:8.13 cm  横:78.4 cm  切羽台厚さ:約0.52 cm  耳際厚さ:約0.45 cm  重さ:175.55 g

何もない素紋の鉄鐔です。厚みは約5ミリほどあり、大きさも縦横が約8センチ前後、なのでずっしりとした重量感。手にすると重いです。地金は柔らかみのある無地風の鉄磨地。わずかに切羽台部が高い中高の碁石形・・・これといった面白みもないただの板鐔と言ってしまえばそれまでです。デザインがあるとすれば下部に空けられた手抜緒孔。しかし、この大小二つの孔ですが、手抜緒孔の役目を果たすには孔の径が小さ過ぎます。たぶんにワンポイント的なアクセントとして空けられたものでしょう。なにせ素紋の板鐔ですから、この孔で奇しくもデザイン的抵抗を試みたと考えたくなります。その試みは無駄ではなく、端正に鍛え整えられた平地を強調し補っているとみることもできます。
作者は近江守継平。あれれ、もしかして刀工ですか。・・・なるほど、この素紋の理由は刀匠鐔ということで解決です。ということは鍛鉄にこだわった一枚と思いたくなります。デザインよりも実用重視、作刀の技が込められた刀匠らしさの現れた作というわけです。それにしても継平は結構名の知れた刀工です。初代は三代康継の門人。造込から本鐔はおそらく後代の三代か四代の作。時代表記を江戸後期としましたが銘の長さからは三代の作に思われ、そうであれば江戸中期頃の作。
刀匠鐔と称されるものは珍しくはありませんが、無銘ではなく在銘の作は多くはありません。イメージの刀匠鐔ではなく本歌の刀匠鐔、ある意味、貴重かもしれません。一つ、気になる点が・・・本鐔には責金(口紅)の痕がありません。まさか未使用の鐔ではないかと疑ぐるも、切羽台辺りにはかすかな切羽による磨れ跡が・・・しかし、中心櫃孔の縁をみても中心が装着された痕跡はどっちつかず。実用目的の鐔ながらこの状態にはお手上げです。ただ、現状での保存状態は申し分なく、良い状態を保っていることは確かです。

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