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鐔

秋草に鳥図(無銘)

商品番号 :TB-077

桃山期 桐箱入

売約済

堅丸形 赤銅七子地 鋤下彫 毛彫 金袋着色絵 金露象嵌 耳赤銅覆輪 両櫃孔

縦:6.70 cm  横:6.35 cm  切羽台厚さ:約0.38 cm  耳際厚さ:約0.36 cm  重さ:91.20 g

見た目だけで室町後期とか桃山期とか平気で語る三枚合鐔の類ではありません。それなりに手の込んだ所作とそれなりの古さを持った上手作と言って良い鐔です。加えて一風変わった造込も見られます。どこがって?・・・まずは漆黒の赤銅地である皮金、潤んだ真黒な風合いがその辺の鐔とは較べないでくれと主張してきます(無垢の赤銅鐔をよそに自信たっぷりの顔をしています)。その平地に蒔かれた七子粒は微細なと言っても良いほどのかなりの細かさ。よーく見ると、なんか違和感が・・・布の目地のような・・・え?横? 七子粒の配列が縦でもなく円でもなく横に並んでいるではありませんか。聞いたことはありましたが、横七子を実見したのは初めてです。それも蒔かれた平地は紋より僅かに低い鋤下彫。切羽台も平地より高く紋と同じ高さ。随分と手間のかかる所作に加え、本鐔の色絵は金袋着です。お〜贅沢、ではなくこれは古い!です。もちろん、紋のデザインも表裏異なった展開。表は秋草(菊と桔梗)に鳥(何となく鶉に見えます)、裏は秋草(萩ともう一種類の花は不明)だけの構図でパターン化された図柄ではありません(数物ではないとすればこれくらいの所作があって当然ですね)。そして金の露象嵌ですが、これも他ではあまり見かけない所作があります。露玉がランダムに配されているのは普通ですが、所々、露玉が二つセットになって配されているのです。う〜ん、珍しいといえばそうで、これも経眼した記憶がありません。これらの所作や造込からすれば、時代は桃山期を下ることはないでしょうね。
他の所作をみれば、小柄と笄の両櫃孔に施された当金と覆輪の色が本体の色と異なっていることからは後補である可能性が高いと思われます。ただ、元来の造込だとすれば、笄櫃孔の大きさが気になります。通常は小柄櫃孔の方が大きことが多いのですが、それは小柄の使用頻度が高まった江戸前期以降に多く見られる形状です。その逆であれば、時代笄などの大振りの笄を装着するため(天正拵など)の大きさかと推測でき、おのずと古い造込と言えなくもなく、本鐔の製作時代を室町後期まで上げることが許されるかもしれません。まあ、そうでなくとも古いことには違いなく、切羽台の中心櫃孔の周辺にある責の激しい痕跡が使用頻度を物語っているとも言えますね。ちょうど真中には鉛で長方形に補修した後が生々しく残されています。その割には総体に健全で、色絵などは剥がれ落ちている個所はほんの僅かです。こうして見ると、良い鐔というのは長く残されるし、使われてきた痕跡もちゃんと現れるもの・・・本鐔は単なる空威張りの三枚合鐔ではないことが伝われば嬉しく思います。

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