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太刀・刀

大和守吉道

商品番号 : B-110-272

江戸前期 摂津 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:64.2 cm 反:1.20 cm 重ね:0.70 cm 元幅:3.25 cm 先幅:2.30 cm 重さ:730 g 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目はやや浅い筋違。
地肌
小板目肌に板目交じり、良く詰み刃寄りは柾心に流れる。鎬地はやや強い柾目。
刃文
焼幅の広い沸本位の五の目丁子乱。匂口はふっくらと深く拳型丁子風となり、小沸がついて砂流風の所作が出て表裏の刃文が揃う。
鋩子
直調に入って少し弯れて三品鋩子となり、小丸の返から丸い玉状の五の目を伴い、深く返って寄る。
大和守吉道

ご存知だと思いますが、大和守吉道は大坂・丹波守初代の二男です。同じ吉道を名乗っていますが、父である大坂丹波や祖父にあたる京丹波などの一門は、家伝の簾刃をはじめとしてかなり意匠豊かな刃文を焼いている印象があります(もちろん全てがそうではありません)。その中にあって大和守吉道は備前伝の丁子乱が特徴で、新刀一文字と称されるほどです。本阿弥光遜の「日本刀の掟と特徴」に書かれた大和守吉道の項は、まさに本刀をそのまま紹介したかのような解説になっています。
抜き出してみると、「沸本位で大弯仕立になり、五の目乱は又は拳形丁子乱が交じり・・・横手より一二寸下の焼幅は狭く小模様になってそのまま鋩子に入る。・・・鋩子は小丸下りで三品風になる。・・・」怒つい刃や尖刃の交じるものがある、とも書かれていますが、本刀にはその影が潜んで焼頭は丸みが強く、怒つい感じはなく深味のある柔らかな丁子です。他には濤瀾風の所作が二個所にあることでしょうか。一つは物打の上あたりに、丸い飛焼風の焼が五の目の頭に重なって現れています。二つ目は鋩子の返に、やはり丸い焼が食い込んであまり見られないユニークな所作となっています。それも指表・指裏の両側、ほぼ同じ位置に焼かれているのです。意図的に焼いているのは明白で、これはこの時代の流れであり見せる刀を意識した結果とも言えるのでしょうね。

大和守吉道が一門と違った作刀を見せるのは、大坂という場所も大いに影響しているのは確かのようで、中河内(二代国助)との合作もあるぐらいですから、拳型丁子を焼いているのも頷けます。濤瀾風の所作は助広一派の影響を匂わせたりと、大坂の刀工達との交流や切磋琢磨の背景が浮かんでくるようです。そういう意味では戦がなくなり刀の需要が減り始めた時に、刀工としての生き残りを模索した姿が本刀には感じられるような気がします。そんな必然から生まれた本刀の出来は、言われている特徴そのままに申し分のない上出来作。匂口は深く長目の丁子の足が延び、刃縁が冴え沸崩などありません。反面、刃寄りには肌目に沿った砂流風の所作が華やかさを加味し、変化に富んだ景色を演出しています。持ち上げるわけではありませんが、まさに吉道の思惑通りに仕上がった一振と言えるかもしれません。

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