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脇指 “うもれし”一振

脇指

肥州平戸住正重(土肥真了初期銘)

商品番号 : C-071-U-286

江戸前期 肥前 保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:51.1 cm 反:1.40 cm 重ね:0.75 cm 元幅:3.12 cm 先幅:2.30 cm 重さ:560 g 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は筋違。表裏に棒樋を鎺元上で丸留。
地肌
柾がかった小板目肌をよく詰み細かな肌合いとなる。刃寄り、鎬地は柾目心に流れ、総体に柾がかった肌合いとなる。
刃文
焼幅尋常な中直刃。匂口は沸本位で、やや締り心にふっくらとし、表裏共に、長目の二重刃、喰違刃が数箇所ずつ明瞭に現れる。
鋩子
直調に入り小丸となり、返は弯れて掃き掛けを伴って尋常に返る。
肥州平戸住正重(土肥真了初期銘)

二重刃・喰違刃が激しくかかる脇指のご紹介です。その所作は焼き始めからいきなり顔を出し、刀身の真ん中過ぎまで暴れまわります。指表・指裏同じく二重刃と喰違刃が連続するオンパレード、それも長く明瞭に輝いて、見本・手本というよりはオーバーアクションの好例といえるほど。ここまでやられれば、爽快な気分になります。刃文の表記は、「直刃に二重刃・喰違刃が交じる」ではなく、「二重刃・喰違刃に直刃が続く」が正解かも。基調となる直刃の匂口はふっくらとして、刃寄りはややほつれ気味に馴染みながらも、叢沸や沸崩、凝った荒沸はなく上手にコントロールされています。そんな刃文が乗る地肌は、総体に柾がかった小板目で刃寄りと鎬地は柾目出来、しかし細かく詰んでいるせいか綺麗な小板目のように映ります。この刃文ですからイコール柾目出来は当然なのかもしれません。
本脇指、鑑定刀に出されたら一発で「当り」を出せる方は、ほぼ現れないのではないかと思ってしまします。逆に一度経眼した方や当ページを覗いた方は「天位」が続出するのではないかと・・・丁子や大乱などの元々激しく動きのある刃文に比べ、静寂な直刃調の刃文が一風違った変化を見せる様を目にすると、思った以上に印象深く感じるのでしょう。それぐらい本脇指はインパクトのある作ではないかと思えます。

姿は元作に先に差がなく延び心の中切先、反がややあるので元禄頃の形状にみえます。しかし本作は延宝頃の作。反が腰反というより中間反に近い形状もあり何となく古風な印象を受けます。この姿のセンスは地方色のせいなのか、ちょっと垢抜けない感じが却って魅力の一つともいえます。
作者は肥州平戸住正重。実は井上真改の弟子として評価の高い土肥真了その人です。正重は真了の初期銘なのです。延宝八年に井上真改の門人となって、真改の作刀技術とノウハウを学ぶことに・・・匂口の深い真改の刃文を吸収しながらも、同時期に活躍した助広の濤瀾刃風の作もあるようです。実際、真改ばりの出来は高く評価されていますが、現存刀は意外に少ないようです。そういう意味で言えば、本刀は数少ない真了作。しかも大坂へ出る前の作、真改の下で当時流行した華やかな刃文を焼いた作との違いが本脇指を通して垣間見れる貴重な一振です。大和伝風の古風な作域から新刀特伝の見せる作域へと変遷し評価を得た真了。その原風景がこの二重刃・喰違刃にあるということでしょうね・・・
因みに、本脇指は「肥前の刀と鐔(福永酔剣・寺田頼助著)」に中心の押型が掲載されています。中心の押型だけなので特徴ある刃文は紹介されていませんが、本をお持ちの方は参考がてら見ていただければ幸いです。

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