INTELLIGENCE
♮ 県指定文化財
Copywritting by Nobuo Nakahara
前稿で地方自治体の“県文(県指定文化財)”について少し触れたが、昔から知っている某県の実情を書いておく。
まず、県文などの審査というか、その趣旨は本当は良いものであるが、例えば刀についていうならば、発足当時から、その県の登録審査員にある意味で“丸投げ”をしているのが実情である。勿論、その物件を撰ぶにあたっては、重要刀剣などに指定済のものが撰ばれやすく、勿論、重美の指定物件も同様である。
この様にすでに指定済の中から撰ぶのなら別に登録審査員の意見を求める必要はない。また、某県の場合ならば郷土刀にスポットを当てて、極力、県内で長くとどまってくれる方法を考えたなら、県文に指定し、それを公開・普及していくべきである。郷土刀ならば県内からは一応文句はつけにくいし、現に理屈に叶っている。
ただ、その郷土刀を撰ぶにあたっては解明されている様な刀工群ならまだしも、未解明に近い刀工群の場合はちょっとやっかいであり、専門家の意見(登録審査員が専門とは限らない)を公平に聞くべきであるが、担当の役所の部所に刀、ことに郷土刀がわかる役人がいるはずもない。だから“丸投げ”にする。そうすると、県文の審査委員の中で勝手なお手盛指定が起きやすくなる。それと、某県のケースでは所有者がまず居住する市などの指定を先に受けた後、上の県の指定という段階を踏む事になっていた。しかし、その市での指定が通らなければ、県文の審査も受けられない妙な事にブチ当たる。
よく知られているケースでは、市に郷土刀の申請をしたが、いつまで経っても何の連絡もなく、揚句の果てに「刀は売買の対象になりやすく、指定すると利益誘導の手助けをする事になりかねないので、市の文化財には指定しません」との回答。これには空いた口がふさがらなかった。そのくせ、建物や石造建築物は指定していたのである。確かに神社の建物を売却はしないが・・・。これでその所有者の郷土刀は県文にはならなかったが、この刀は郷土刀として珍しく、是非県内で保存してほしかった。
国の役人も文化に対する理解はないが、地方公務員はもっとひどい。しかも、同一県内でも市町村によって全く違うとなれば、どうしようもない。国も県も、もっと真剣に文化財をどの様に保存して伝えていくかを考えないと、とんでもない事になる。
(文責・中原信夫 2015年7月)