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♮ 低質すぎる・・・日刀保の入札鑑定会-2

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

前回に続いて入札鑑定について書いておくが、もうひとつ大きな問題がある。つまり、鑑定刀に使用する刀の質と正真性についてである。

ズバリ言うと、鑑定刀に再刃、偽銘を使用すればどうなるかである。そうした?の湧かないものを講師は厳選しなければいけない。こうした感覚が日刀保設立来の講師達に甚だしく欠けている。断っておくが、私が完璧とは全く思っていない。私は、できるだけ吟味し、?のないものをと念願してきた。

 

かなり以前から日刀保の売店などで販布された『鑑刀秘抄』なる冊子であるが、これは元(公財)日刀保の役員である某氏が『刀剣美術』の鑑定刀、紙上鑑定刀に出題された刀の特徴を解説から抽出して羅列したもので、最初の(公財)日刀保・九州ブロック大会(熊本支部主催)でも配られている。私はこれを読んだが、全くもって難解そのものであって、この著者の意図は何か、今もってわかりかねるものである。

つまり、鑑定刀に使用したものが、前述の如く、再刃、偽銘ならどうするのか。まさに「ミソ」と「クソ」が混ざっている。このように書くと著者からも「日刀保」が使ったもの、指定したものは全て信頼できるというだろう。しかし、冷静に考えてみれば絶対にそんな事はいえない。再刃についていうなら、以前より先行して発表している「豆知識」(刀剣杉田店サイト/http://www.token-net.com/knowledge)に詳しく私の考えを述べてある。つまり、私が再刃と断定した見所はどこかをさえ日刀保は全く解説しない。たぶん、見解の相違として門前払いとするのが通例。「信じる者は救われる」というのか「腐っても鯛」ということになろうか。もっとも腐ったのが本当の鯛ならまだ少しは救われるかもしれないが…。「張り子の虎の潰れたもの」は、誰も有り難いとは思わなくなるであろう。

 

この冊子はまさに、入札鑑定用の早見出のような役目をするものであることは明白である。こんな事をして、隅々入札で高得点をとっても、刀そのものの理解と愛好につながることは全くなく、むしろ逆行するもので“わかったつもり”愛好家を多量につくることになってしまうし、また、そうなった。それを認めて日刀保は方向転換したとするなら、高得点のみを目指した人達(入札者)も悪いが、それを諫め、正しい方向に持っていかなかった、本来の重要かつ基本的な考え方、方策を講じなかったことは、全く語られていない。唯々、入札鑑定方式のみが悪者になってしまっている。

要は、入札鑑定もひとつの方便にすぎないが、その方便を最大限活用、利用して愛刀の方法を芽生えさせ育てていくのが求められているのである。

むしろ一般的には歓迎されない再刃、偽銘の見所や考え方を入札鑑定会を通して伝授していくのが先決事項と思うが、皆様は如何お考えになるであろうか。
(文責・中原信夫)

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