INTELLIGENCE
♮ 偽重美誕生の温床
Copywritting by Nobuo Nakahara
近年は、インターネットによる刀・小道具等の販売が盛んであるが、つい最近であるが国指定(重要美術品)を受けているという触込の短刀が売りに出されていたらしい。我が家にはインターネット回線もスマホもないので確認しようがないが、知人からの情報と問合せで知った。早速、『重美全集』で調べてみたら該当はなく、今から40年程前によく流行った偽重美の復活か、新規製作であろう。
どうしてこの重美がよく製作されるのか。ひとつには文化庁に刀専門の係官(係官はいても刀が全くわからない人間)がいないので、それが盲点になっている。
私にすれば、刀は日本の美術品の最高峰であるのに、文化庁では刀はむしろ邪魔扱い、除け者同様になっている事は確かで、以前の上古刀指定事件以来、刀の国指定はない。この上古刀指定問題は本当に痛かった。
さらにもうひとつには、過去に(財)日刀保と文化庁に軋轢があった事である。その軋轢を生んだ理由は、欲ボケ政治家とキャリア官僚の天下り会長であって、他には特定の学芸員の横暴である。ことに、昔から文化庁は刀については必ず日刀保といっても一人の人物の意見を鵜呑みにしてきた感が強いが、ある時期、つまり一人の人物がいなくなったり、神通力?がなくなった時期からそうは行かなくなった。要は文化庁と日刀保のトップに刀に精通した人間がいない。それを良い事にやりたい放題。これでは御役人は表面的にそっぽを向く。
そして結果は“刀の社会は金(カネ)に汚い。良くない社会”という間違ったレッテルを貼られて、相手にされなくなる。刀そのものに全く罪はないのにである。但し、刀以外の他の分野においても全く同じ事をやっていると思うが、どういう訳かあまり表に出てこない。上手くやっているのか、上手く隠しているのか知らないが…。
因みに、刀は真偽がある意味はっきりするから○×が出てくる。他の分野は○か×か全くわからないから、文句も出てこないとも言える。これは果たして喜ぶべきなのか、はたまた、悲しむべきことなのか?
(文責・中原信夫)