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INTELLIGENCE

♮ 誌上鑑定刀

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

日刀保が財団法人から公益財団法人になってから、既に何年か経つが、最近の機関誌『刀剣美術』の誌上鑑定刀に対するヒントの出し方に大いに違和感を覚えてならない。

 

つい二年程前か、短刀の良西在銘が出題されたが、これは確か、故・鈴木嘉定元会長のコレクションの一振と思うが、これを出題刀にしたのである。私が違和感というのは、この出題刀のヒントの最後に“在銘は本短刀一本”というような趣旨のヒントがあったことである。このヒント以外でも、押型を見れば、多くの人は良西と気づくし、実際、手にとってみた方も少なからずおられよう。

 

誌上鑑定というのは、実刀鑑定の際の判断材料の収集と判断能力を養うための方便であって、実刀鑑定では一切ヒントはないし、与えられない。もっとも、談合入札は各地・各刀剣会で以前から多発しており、その常習者もいる。近年では日刀保のブロック大会での一本入札でも談合入札が堂々と行われ、その談合を指導したと目される人物に本部役員がいたようで、当番支部の支部長が、談合入札によると確実に判断された得点を排除して三才(天・地・人位)を決定したという様な話もある程。

 

それ程、入札点を高くしたいのかと思われて、理解に苦しむが、この誌上鑑定にどうした考えがあって“在銘は本短刀一本”としたのか。まさに、入札者(会員)の御気嫌取りとしか考えられない。私が出題担当者に問い質せばおそらく「皆様によりよく理解を深めていただくための処置でして、決して他意はございません。入札点数を意識してはいません、普及のためでございまして・・・」ぐらいの回答となるはず。ならば実刀鑑定でも同様のヒントを短刀にくっつけておけ!!

それから、『刀剣美術』誌の巻末に掲載している入札者(当った)の氏名や年間高得点者表彰も公表するな。もっとも、その氏名発表や全問当りの表彰状を一番の楽しみにしている会員もいると聞いてはいるが・・・。
(文責・中原信夫)

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