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INTELLIGENCE

♮ 一振の追憶 その24(備中国水田住国重作)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

脇指  銘
備中国水田住国重作

刃長/一尺一分、反/四厘程、平造、真の棟、中心は生で孔は一つ。
 
 
[地肌]
小板目肌がよくつみ無地状となり、裏の棟寄りは柾目肌が流れる。
[刃文]
沸出来の大乱で沸匂が深く、大五の目乱が数個一団となって箱状の大乱になり、表裏揃い心。刃中に足が入り砂流が頻りに所作する。
[鋩子]
直状でやや深目となり、先は小丸で掃掛となり、返は深く、棟を軽く焼く。

本刀は今から25年程前にお預かりしたのですが、当時の所有者から「新刀水田で短刀(小脇指)を持っていますが・・・」とお聞きしたので、早速、拝借させていただきました。

 

新刀水田というと、荒沸の大出来の作が殆んどで、現在では評価も低いようですが、本刀は珍しく平造であり、何といっても刃文の出来に殆んど叢がなく、上出来の作です。

もちろん、新刀水田では大与五国重が一番人気で評価も高いのですが、それ以外の国重は十把一からげ的に余り注目されないのです。

確かに、それはそれで間違っていないのですが、本刀の様に俗名のない国重であっても上出来の作は然るべく評価をするのが本当でしょう。

 

今から四十年以上も前ですが、村上先生が知合いから研磨を依頼された俗名のない新刀水田国重の本造脇指がありましたが、これが研屋の不始末で刀身を真二つに折ってしまった事件があり、その処理に村上先生が苦慮されましたが、持主はその折、法外な弁償を要求してきました。不始末をしでかした研屋も研屋です。

その脇指はよくある出来であって、今なら言えますが新刀水田の数物でした。研屋の弟子の不始末というのが原因でしたが、よく大出来の刀は折れるという説がありますがケースバイケース。本刀の様に上出来のものは、その限りではない事をよく認識してほしいと思います。

 

また、棟焼が多いのも折れやすく、新刀水田がその好例という事をいいますが、これも?です。確かに前述の折れた脇指には棟焼が多かったのですが、その前に手抜作の数物です。数物は時代・国を問わず、どこにでもあります。

因みに、棟焼は淬刃時には必ずといって多少なりとも入るもので、後世、研磨の折に研ぎ難いので、取り去る事が多くあります。したがって、来の棟焼が現在にまで残されているのは大いに疑問で、棟焼があっても、とっくに取り去っているでしょう。新刀水田もそうした点ではまさに冤罪と言えます。
(文責・中原信夫)

 

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