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INTELLIGENCE

♮ 梃子鉄(てこがね)について

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

世上、変梃子(へんてこ)という文句がよく使われますが、今だに変梃子な文言の説明がなされています。

つまり、江戸新刀の虎徹の作を説明する時、“鎺元にだけ地鉄の肌目がやや緩(ゆる)んだ「梃子鉄」とも捉える事のできる肌合”などと説明して、あたかも、こうした所作が虎徹と捉える状況証拠の一つのものとしています。こうした説明、見方は同じ繰り返しでもう何十年以上も続いており、改める気はさらさらないらしい・・・。

 

梃子鉄とは普通は包丁鉄などを使用し、先の方に玉鋼をくっつけて折返鍛錬をするのですが、玉鋼に異質の包丁鉄が混入すると、変な肌があらわれてきます。したがって刀工は、こうした間抜けな作業は絶対にしません。そうでないとまさに変梃子な鍛肌が出現してくるのです。

私などは折返(十文字)鍛錬の作業では、熱くてしょうがないから適当に折返すべく、赤熱した鉄に適当にタガネを入れて折返しましたが、その時、折返す鉄の長さが半分になっていないで違うと、玉鋼の先端が梃子鉄にかぶさってしまい、まさに変梃子な状態となってきます。これは最悪の鍛錬です。つまり、最初から変梃子な肌になってしまいます。普通の刀工は、こうした作業は絶対にしませんし、中心を作る折も、出来るだけ元の方(梃子鉄がほんの少しでも混入する恐れや可能性のある部分)から、かなり上の方で切り離すぐらいに慎重にやります。

したがって、鎺元どころか、中心全体(中心尻にだって)には梃子鉄は一切混入しないのです。まして、虎徹は中心まで精鍛している所作があり、強靭この上ないものです。

 

では、鎺元のこの“肌目がやや緩んだ鉄”とは何でしょうか。これは芯鉄です。つまり、研減っているのであり、これは全ての刀に言える事。したがって、江戸法城寺にでも、兼重にでも必ずおきる事。殊さらに虎徹の説明にのみ、繰返すのは如何なものでしょうか。それが学問とでも言うのでしょうか。

 

これを解決するには、一度、日刀保の学芸員諸君を刀工に頼んで実際の作刀作業をしていただきたいものです。

そうするだけでも、もっと考え方が違ってくるかと思いますが・・・。ただし、その場合に選ぶ刀工は正直で嘘を言わない性格が必要になりますが、これが学芸員諸君に撰別は出来るかなあ?・・・。こちらの方が却って一番むつかしい?し、売込の上手な刀工がいますからね・・・。
(文責・中原信夫)

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