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♮ 一振の追憶 その36(筑前国福岡住是次)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

脇指  銘
筑前国福岡住是次
寛文十一年二月日

刃長/一尺三寸五厘、反/三分、本造、真の棟、中心は生で孔は二つ。
 
 
[地肌]
総体に柾目肌で少し流れ心となり、鎬地も柾目肌。地移がある。
[刃文]
匂出来の丁子乱に五の目交じり。刃中に足が入り砂流が所作。刃中の足が一定の所でとまる。
[鋩子]
押型の通りで表裏少し違うが深く、先は小丸で返は少し深め。

筑前石堂是次の脇指ですが、同作中の本造脇指としては一番刃長の短い作例でしょう。現代では、このように短い刃長は定寸ではないと敬遠され軽視されがちですが、とんでもありません。

本刀はおそらく特別注文である事は上出来である事、そして珍しく年紀のある事で十分に証明されます。ひょっとすると大小での注文であったのかと思われますが・・・。

 

さて、本脇指は総柾目肌(鎬地も平地も)です。昔から丁子乱(殊に移を伴った)を柾目肌に焼くのは伝法違反であるとされています。また、丁子乱は必ず匂出来ですが、七代運寿是一(江戸石堂)のみ小沸で丁子乱を焼く事は有名です。

さらに、本刀の刃部(刃中)も柾目鍛である点から、無銘一文字などの極に対する良い判断材料となり得ます。

 

筑前新刀に柾目はままあり、同じ筑前国・下坂一派、信国一派にも少ないですがあります。筑前新刀は未だ押型集が刊行されていませんが、是非、地元の愛刀家の人々によって、本格的な研究成果と押型集が発刊されんことを願ってやみません。
(文責・中原信夫)

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