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INTELLIGENCE

♮ 一振の追憶 その37(伊賀守藤原金道・初代)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

刀   銘
伊賀守藤原金道(初代)

刃長/二尺三寸一分五厘、反/五分強、本造、行の棟、中心は生で孔は一つ。
 
 
[地肌]
小板目肌に板目交じりで少し肌立つ気味あり。鎬地は柾目肌。
[刃文]
匂出来、匂口の締った五の目丁子乱にコズんだ乱が交じり、少し飛焼あり。刃中には太い足が入る。総体に焼幅が広い。
[鋩子]
乱込、先は小丸で少し尖り心となり、返は特に深い。

初代の伊賀守金道ですが、作風的には同工出身地の末関の臭を強く残しています。ただ、打刀といいますか刀は意外に少なく、見かけられる作とすれば、脇指、短刀の方が断然多いかと思います。

この初代金道は世間的には余り評価されにくい感がありますが、その大きな理由に、堀川一派への偏重・偏愛傾向があります。私は初代金道はじめ京の三品一派の存在は堀川一派よりも大きく、もっと正当に評価すべきかと常々考えていますし、今迄にもその点については触れています。

 

こうした三品一派をさらに低くしか評価されない原因は何かというと、末関刀工を低くしか見なかった為であり、その他に、近代の権威者とされる人が何故か相州傳と称する作風とされる堀川一派、殊に国広を過当評価したのが原因と考えています。

国広も京都在住時(晩年)には上出来を残していますが、京都に定住以前の作などにはむしろ末相州と末関のミックスであり、上出来といえるのは至って少ないのに、“ザングリ肌”等と言う特殊名称をつけて、評価を惑わせた感があります。ただ、それに上手にのせられた人達も悪いのですが・・・。

 

さて、本刀は末古刀にしかみられない地刃ですし、同作の刀には匂口の締まったものがみられますが、脇指などには新刀然とした匂口もあります。

総体的に、三品一派は刃文の形が表裏揃うのが特徴とされて、入札鑑定会での見所の一つになっていますが、これは末関以来の伝統的手法でもあると考えられます。しかし、世人はこの表裏揃う刃文をどちらかというと嫌い、しかも下作という感覚をもっているにも拘らず、二代助広の大乱も虎徹の瓢箪刃も表裏がピッタリと揃っていますが、その点については誰一人もケチをつけません。これはどう考えても片手落ちの考えであり、今一度、愛好家に考え直していただかないといけない重大な問題です。

なお、本刀は同作中、極めて健全であり、初代金道の代表作の一振であり傑作です。
(文責・中原信夫)

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