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♮ 一振の追憶 その38(上総国住人正直)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

刀   銘
上総国住人正直

刃長/二尺三寸一分五厘、反/五分強、本造、行の棟、中心は生で孔は一つ。
 
 
[地肌]
総体に板目肌が流れ心となり、大板目状の肌が交じって少し肌立つ。
鎬地の棟寄りと、刃寄りには柾目肌が出る。
[刃文]
小沸出来の五の目乱に角張った五の目や五の目丁子乱が交じって不整(ふぞろ)いとなる。
刃中に足が太く長く所作し、砂流などの縦の所作が多く、飛焼も出る。
[鋩子]
総体に弯(のたれ)心となって小乱が交じり、先は掃掛て返は深く、棟焼が少し出る。

この正直は『銘鑑』では山浦清麿門人となっていますが、現存刀が至って少なく、経眼したのは本刀と平造の脇指の二本位で、年紀も未見です。

したがって、確実な事は言えないのですが、巷間言われているには、清麿の門人ではなく、おそらく斉藤清人にほとんど師事したとされますが、『清麿大鑑』では嘉永七年二月年紀の短刀と刀を掲載して、正直の方が清人よりも先輩とみています。

 

ただ、本刀の中心仕立や刃文の構成などから言えば、斉藤清人のそれらとよく似ていると思われますが、今少し範疇を拡げれば山浦真雄系にも似ていると見られる点もあります。

また、在銘・正真の現存刀が極めて少ない事もありますが、作位が低いのでナメきってみている人達が多く、一見して偽銘と思われる粗雑な銘文の作が流通しているのにも注意していただきたいと思います。
(文責・中原信夫)

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